女子旅 江戸時代に一人旅 奥州〜九州2万キロ 足跡追う
2017年7月28日 10時32分
江戸時代に全国を旅しながら俳句や書画などを残した山口県下関市豊北町出身の
女流文人、田上菊舎(1753〜1826年)をテーマにした企画展
「女流文人 田上菊舎−−江戸の女子旅−−」が、同市長府川端の市立歴史博物館で開かれている。
企画を担当した同館の松田和也学芸員は「日本の女性史の中でも特筆される人物が
下関から出ていることを知ってもらいたい」と話している。展示は30日まで。【上村里花】
菊舎は長州藩士、田上由永(よしなが)の長女として、田耕(たすき)村
(現在の下関市豊北町)で生まれた。16歳で結婚したが、24歳の時に夫と死別後は
俳人として生きることを決意する。尼となり、俳人として全国を渡り歩き、
さまざまな文化人らと交流しながら、俳句にとどまらず、漢詩や和歌、茶道、琴など諸芸の腕を磨いた。
女性が一人で旅をすることが困難だった江戸時代に、菊舎は奥州から九州まで
一人旅を続け、生涯で踏破した距離は2万キロ以上に及ぶとされる。
江戸では俳句とともに茶道に励み、大阪で和歌を学び、
京都では書画が公家から絶大な人気を得た。
法隆寺の宝物である中国伝来の開元琴を演奏するなど琴の名手としても知られた。
また、長崎では通訳から中国語の発音を学び、清国の文人らとも交流を深めた。
60歳を過ぎてからは、実家のあった長府で暮らしたが、向学心は晩年まで衰えることはなかった。
展示は、菊舎が旅に携帯した硯や茶道具、俳人たちとの交流の様子を
つづった俳諧記録など約60点で、旅の様子がうかがえる内容となっている。
松田学芸員は「さまざまな人に助けられ、慕われた菊舎の人間的魅力が分かる。
元祖女子旅とも言うべき菊舎の旅を展示を通じて見てほしい」と呼び掛けている。
https://mainichi.jp/articles/20170728/k00/00e/040/201000c