東京・霞が関の経済産業省。本館と別館の間にある駐車場に今年3月、日産自動車のミニバン「セレナ」やホンダの「フリード」など、自動車大手8社の新型車が並んだ。
いずれも自動ブレーキやアクセルとブレーキの踏み間違い防止装置など、安全運転機能を備えた車両。経産省など4省庁が主催した異例の“試乗会”だ。
全国で試乗会開催
「おお、本当に止まった」
進路に置かれた自動車模型に反応し、急停止した車の助手席で、経産省の高木陽介副大臣は驚きの声を上げた。
当時、自動車販売店などの試乗会で、自動ブレーキが利かないなどのトラブルが相次ぎ、業界内では自粛ムードが広がっていた。
経産省などはこの試乗会を皮切りに、自動車大手各社とともに試乗会を全国で開催している。事故防止に向け、安全運転サポート車の普及を促すためだ。
「取り得る対策を早急に講じてほしい」
安倍晋三首相が関係閣僚会議で、こう指示したのは昨年11月。
経産省と国土交通省、警察庁、金融庁の4省庁は「『安全運転サポート車』の普及啓発に関する関係省庁副大臣等会議」を設置し、急増する高齢者の交通事故防止に乗り出した。
昨年12月、福岡市の病院に暴走したタクシーが突っ込んで3人が死亡した事故で、福岡地検は運転手の男性がアクセルとブレーキを踏み間違えたと判断した。
また、今年4月にも、埼玉県入間市のショッピングセンター駐車場で、76歳の女性がアクセルとブレーキを踏み間違え、1人が死亡する事故も起こっている。
2017年版「交通安全白書」によると、16年のドライバー10万人当たりの死亡事故件数は、75歳未満が3.8件だったのに対し、75歳以上の高齢者は8.9件と約2.3倍に上っている。
高齢化が進む日本で、こうした事故を防ぐためには、自動車の安全機能強化が不可欠だ。
関係省庁副大臣等会議は、国内メーカーの自動ブレーキの新車搭載率を、15年の約45%から20年までに90%以上に引き上げる目標を掲げた。
【セーフティードライブ】(下)「本当に止まった」 高齢者の事故防止急務 経産省、試乗会で安全運転車両を普及促進
http://www.sankeibiz.jp/business/news/170726/bsa1707260500001-n1.htm