全域に避難指示が出た福岡県朝倉市では5日午後、急激な増水に行く手を阻まれ、命からがら救助された人もいた。
【映像ニュース】記録的な豪雨に見舞われた朝倉市
運送業の田中翔さん(25)は祖母が心配で、職場から市内の祖母宅に向けて車を走らせていた午後4時半ごろ、冠水した道路上で立ち往生した。「前の車は動けたが、急な増水で動けなくなった」
。1台だけ濁流の中に取り残された。
消防や警察に救助を求めているうち、泥水が車内に刻々と流入。約2時間とどまっていたが、水位はシートに座った胸の近くに迫ってきた。
「水圧でドアが開かなくなるかもしれない」。意を決して車外に脱出。腰の高さの濁流に足をとられながらも、水面上にかろうじて出ていたガードレール目指して進み
、腰掛ける格好でさらに救助を待った。「流木にぶつかることもあり、とにかく寒くて、眠かった」と語る田中さん。辺りは真っ暗。全身ずぶぬれ、泥まみれの状態で、低体温症の恐れもあった。
この間、絶えず励ましたのは母の恵さん(47)だった。避難所の地域生涯学習センターから携帯電話越しに「大丈夫?」などと言葉を掛け続けながら、消防や警察への連絡を試みていた。
午後7時半すぎ、恵さんの携帯に「高速道路にたどり着いた」と連絡が入った。「消防も警察も対応が追いつかないのではないか」と考えた田中さんは救助を諦め
、さらに濁流の中を突き進み、高速の非常階段までたどり着いていた。高速は当時、通行止めだったが、恵さんの連絡を受けた警察が急行し、田中さんを保護した。
田中さんは、一夜明けても当時のショックが残っているといい、「とにかく休みたい」と疲労困憊(こんぱい)の様子だった。恵さんも「寝ちゃ駄目だと思い、
とにかく声を掛け続けるしかなかった」と振り返った。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170706-00000071-jij-soci