<懸案残る苦肉の日米韓連合>
米原子力事業の巨額損失により債務超過に陥る見通しの東芝は、メモリー事業を分社化し、過半の
株式を売却することで、財務立て直しに必要な2兆円規模の資金調達を狙った。
しかし、「東芝メモリ」の新スポンサー探しは数カ月の迷走を続けた。事態が進展をみせたのは今月21日。
東芝はようやく、政府系の産業革新機構と日本政策投資銀行、米投資ファンドのべインキャピタルで構成する
買収連合を優先交渉先に選んだと発表した。
関係者によると、同連合の提案は、2兆円に上る出資額のうち、8500億円は米投資ファンドのべインキャピタルが
拠出するが、その約半分の4000億円は韓国半導体大手SKハイニックスがベインに融資をするという複雑な仕組みに
なっている。
寄り合い所帯とも言える苦肉の「日米韓連合」。そのスキームでは、どこが主導権を握って、競争し烈な
メモリービジネスをけん引するのか、まだ明らかになっていない。
今回の入札に参加した陣営の関係者は、半導体業界で生き残る条件として、1)技術、2)資金、
3)リーダーシップを挙げた。連合に加わる革新機構、政投銀、べインキャピタルの3者には
半導体の技術や経営に関するノウハウがないうえに、ファンドや政府系金融機関という組織の
性格上、リスクが伴う投資資金を負担する能力には限界がある。
確かに、東芝メモリと競合しているSKハイニックスにはフラッシュメモリ事業の技術やノウハウがあり、
財務体質も良好で3条件を兼ね備えている。ただ、ハイニックス社は現時点では融資提供者という立場だ。
将来、東芝メモリの経営に関与することが買収プランに含まれているとすれば、各国における独占禁止法上の審査が長期化するおそれもある。
その場合、来年3月末までに東芝に資金が入らず、今回の売却目的である債務超過の解消が実現しない
という、最悪のシナリオに至る可能性も否定できない。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1706/23/news079.html