元横綱白鵬こと宮城野親方(39)が、弟子だった元幕内北青鵬(22)の暴力を止められず監督責任を怠った咎(とが)により、角界を追放されそうである。その一方で、白鵬追放の急先鋒に立つ元関脇栃乃和歌こと春日野親方(61)も、弟子の暴行を隠蔽(いんぺい)していたようだ。真相を掘り下げてみると――。

 目下、エディオンアリーナ大阪で開催されている大相撲春場所。初日を迎えた今月10日以降、会場では春日野親方に関するあるうわさが広まっているという。

「それは、春日野部屋に所属する元十両で現在は幕下の栃武蔵(25)が、兄弟子で幕下の栃神山(23)に暴力を振るい、春日野親方がこの事件を隠蔽したといううわさです。栃神山は宿舎から逃げ出し実家に帰り、被害を受けたにもかかわらず、なぜか春日野親方によって引退届を出させられたとか。どうやら栃神山のほうも素行に問題を抱えていたようです。初日から両者が休場を続けていることで、うわさは徐々に広まっていきました」(大相撲関係者)

 春日野親方といえば日本相撲協会ナンバー3の巡業部長を務めており、現執行部の中心的人物だ。白鵬追放の急先鋒に立っていることでも知られる。

「宮城野部屋は先月公表された北青鵬の問題の責任を取る形で4月以降、所属する伊勢ケ浜一門の預かりとなることが決まっています。しかし、その具体的な内容は煮詰まっていません。部屋消滅の危機が迫っており、宮城野親方としては最善の方法を見つけて何とか踏みとどまりたい。対する春日野親方は、危機管理部長の元関脇大寿山こと花籠親方(64)と共に、伊勢ケ浜一門が提示してくる案に難癖をつけているようです」(同)

 協会の現執行部を中心とする体制派からすれば、角界を乗っ取らんばかりの野心を隠さない宮城野親方は大きな脅威だった。

 だから、協会は北青鵬の問題で宮城野親方に可能なかぎりの重いペナルティーを科したわけだが、そんな協会側の中心人物にも同様の不祥事があったとすれば、件の処分はどうなるのか。

 春日野親方に電話で直撃し、栃武蔵による暴行の有無を質すと、こう答えた。

「いや、お話しすることはないです」

 続いては、親方が栃神山に引退届を出させたかどうかを聞いたが、しばし間を置いてから、話はできないとガチャ切りされた。

 また、栃神山の実家を訪れ、母親に暴行被害の有無を尋ねてみたが、

「お答えできません」

 と、こちらでも取材を拒否されてしまったのだ。

 協会に書面で質問を送ると、およそ以下の回答が返ってきた。

「春日野親方から危機管理部長が聞き取った内容は次の通りです。2月13日、当時は関取だった栃武蔵の付け人だった栃神山が、指示された仕事をせずに寝ていた。それを発見した栃武蔵が足で起こした。そこでさらに指示を出したにもかかわらず、栃神山が仕事をしなかったので、胸ぐらをつかんだ。その行為に対して栃神山が暴力を振るわれたと大騒ぎし、部屋を飛び出した。周りの力士たちにも確認をしたところ、上記の証言と相違がなかった」

 春日野親方がこの暴力行為を隠蔽したのではないか、との質問に対しては、

「2月14日、春日野親方より危機管理部長に報告があったため、隠蔽はないと考えております」

 その他、栃神山の引退届は出されているが手続きがまだ完了していないこと、栃武蔵は2月14日に左肩を手術したので休場していることなどを明かした。

 さて、協会は以上の回答によって、被害は栃神山の主観であって、暴行はなかったと主張したいのかもしれないが、そうは通らない。栃神山が「暴力を振るわれた」と言っていたことを認識しているわけで、であれば被害者にも丁寧な聞き取りを行うなど、さらなる調査が必要なはずだ。春日野親方からの聞き取りだけで、安易に結論を下すことはできまい。

 そして、1カ月以上も外部に事実関係を公表しておらず、春日野親方が本誌(「週刊新潮」)の取材を拒否したことからも、協会ぐるみで隠蔽を図ろうとしていたとみるのが妥当ではなかろうか。

 昨年、陸奥(みちのく)部屋でも暴行隠蔽が発覚したが、協会ナンバー2の事業部長だった元大関霧島こと陸奥親方(64)の処分は極めて軽い報酬減額にとどまった。

 仲間にはとことん甘く、敵にはひたすら厳しい不公平な協会に、宮城野親方を裁く資格はあるのだろうか。

「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載
https://news.yahoo.co.jp/articles/3985e6d620d8c7a9a3373cf07ddff3b4d7a2c779