無音の客入れ、シンプルな照明、そして暗転。直後、闇を劈く大きな“ドン”というドラムの音がひとつ。突然の大きな音に体をびくりと緊張させ、驚く人も多かった。しかし、ファーストルックが登場して観客はもっと驚いた。なぜなら、乳房を強調させるように、先端を尖らせたコーンブラが向こうから歩いてきたからだ。多くの人は思ったはず。「これは、カナコサカイ(KANAKO SAKAI)のショー会場であっているよな」と。

カナコサカイというブランドはデビューから数シーズンながらも、クリーンで洗練されたブランドイメージを守ってきた。色で例えるなら、パステルカラー。もので例えるならマイナスイオンに満ちた森林のイメージだ。それを、強烈に裏切ってきた。前シーズンのショーが始まる前も想像したものだ。「ブランド初となる今回のショーは気を衒った演出はなく、実直でクリーンなものになるだろう」と。だからこそ、会場に足を踏み入れた時に、ディスコライトと爆音のダンスミュージックに面を食らってしまった。そして今回もまた別のベクトルで、カナコサカイの盛大でとびっきりのサプライズにあった。

(中略)

カナコサカイが、女性解放を目的としていたはずの画一化された「女性」を、究極の女性性(=乳房)で打開してくれる様をみながら、コーンブラを世の中に広めたジャン=ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)が、ミュージカル「ファッション・フリーク・ショー」で言っていた言葉を思い出していた。

「ファッションとは宗教や文化、慣習にとらわれずにすべて取り込んで解放すること」

 みんな同じじゃなくていい。その人だけの美しさを自らで選ぶことに、意味がある。ファッションとはそういうものである。そんな忘れかけていた当たり前のことを、そっとカナコサカイは語りかける。

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>>画像は2以降

https://www.fashionsnap.com/article/kanakosakai24aw-report/
2024.03.14 Thu. - 10:01 JST FASHIONSNAP