公開中の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の原作者・汐見夏衛氏が21日、東京・新宿ピカデリーで行われたティーチイン上映会に登壇。「映画に影響されて、今、石丸と千代ちゃんのめちゃめちゃ熱い番外編を書いています」と明かすと、会場から拍手が起こった。

 同映画は、俳優の福原遥、水上恒司らの出演による、現代の女子高生と、戦時中の特攻隊員との時を超えたラブストーリー。同日時点で累計興行収入42億円を突破。あわせて、原作小説(スターツ出版文庫)の発行部数も125万部を超えたことが報告されると、汐見氏は「映画化によって原作小説を読んでくださる方が2.5倍に増えるなんてなかなかないことだと聞き、自分にとっては幸運ですし、映画づくりを傍から見ていた者としては、キャスト・スタッフの皆さんの努力が報われてうれしい、という気持ちでいっぱいです」と喜びを伝えた。

 じつは同映画のイベントが開催されるのはこの日で29回目。汐見氏が登壇するのも10回目で、原作者がこれだけ稼働するというのもあまり例がない。汐見氏は「毎回ハッとさせられる質問があって、それだけ皆さんがいろんな部分に気をつけながら映画を観てくださって、人によって感じ方が全然違うんだな、ということを改めて感じ、勉強になりました」といい、この日も熱烈な『あの花』ファンとの交流を楽しんでいる様子だった。

 原作小説は、高校の国語教師をしていた汐見氏が作家として本格デビューする前の、「小説を書き始めて1~2年の頃」に書いたもの(紙書籍化は2016年)。映画化にあたり、主人公の百合が中学生から高校生に変更されるなど、小説と映画では異なる部分もある。

 このことに質問が及ぶと汐見氏は「映画を観て、こういう設定にすればよかったのかと、学ぶところもたくさんあります。例えば、彰が教員になりたいという夢を持っていたことは原作には書いていないけれど、(水上が演じた)彰ならきっと教員に向いているだろうな、と思いました。刺激をたくさんいただいて、ありがたいと思っています」と答えた。

 これを受けて、共に登壇した同映画の西麻美プロデューサーは「汐見さんが教師をされていたということからの逆算もあったと思います」と返した。また、シナリオハンティング(脚本を書くための取材)で鹿児島にある知覧特攻平和会館を訪れ、「実際にあったことを盛り込んだ脚本にしたいと思いました」と明かした。

 鑑賞者から人気の高い、特攻隊員・石丸(伊藤健太郎)に女学生・千代(出口夏希)が手製の人形を渡すシーンは原作にはなく、知覧特攻平和会館に実際に贈られた人形があったことに由来する。

 「伊藤さんと出口さんの演技も素晴らしく、いいシーンになったと思っています」と西プロデューサー。汐見氏も「伊藤さんのファンの方が原作を読んだら残念な気持ちになってしまうかも。出口さんもかわいくてけなげで、当時の女学生を見事に体現されていた。石丸千代カップルが人気と聞いて、でしょうね、と私も思っています」とお墨付きを与えた。

 石丸と千代の番外編を執筆中であることを明かした汐見氏は、すでに発売されている続編小説『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』にも言及。「映画をご覧になった後に続編小説を買ってくださる方が多いと聞き、少し申し訳ないな、という気持ちです。『あの星が~』は、映画化が決まる前に書いたものなので、映画の直接の続編ではないんです。でも、物語の続きが気になるほど心が動かされた方がたくさんいるということでもあるので、それだけ映画にパワーがあるんだと思います」と恐縮気味に語っていた。

オリコン

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