80代の男性と「感情」に関する話をしたというマリさん。男性は感情によるエネルギー消費を避ける傾向にあるのに、対して女性は――。(文・写真=ヤマザキマリ)

●感情というエネルギー

ある80代の男性の友人曰く、「男は年齢を重ねるごとに性格がどんどん丸くなっていく」ものであり、「気に食わないことがあればがむしゃらに刃向かっていたような若い頃にはもう戻れないし、戻りたいとも思わない」のだそうだ。

たとえば、妻の言動に若干の不条理を感じたとしても、それに対して意見を口にしたり争ったりすることはない。黙って言い分を受け入れ、従ってさえいれば、自分の心も生活も穏やかになる。不平不満を言うようなエネルギーの浪費は避けるに越したことはない。

さらに不平不満のような負の感情のみではなく、素敵な人との出会いがあっても、「恋愛感情も疲れる」ので極力避ける。それこそ妻に勘ぐられたりしたらとんでもなく面倒なことになるし、平穏無事に人生を締めくくるためには、妻の機嫌の維持を何よりも優先。

ピカソやベルルスコーニやアル・パチーノのように、年配になっても恋愛力を稼働できる男たちの体力や精神力は非凡な例なのだそうだ。

【中略】

●古代のシャーマンのように

しかし、こうした感情抑制の傾向は、実は高齢の男性に限ったことではない。

恋愛のような感情はエネルギーを浪費するので、できれば避けて通りたいと思っている若者は少なくないという。振られたときの自己回復力に自信がないから、というのも理由らしい。このままいけば、結婚や出産への意識も萎えて、少子化はさらに加速の一途をたどることになるだろう。

たとえば映画にしても、前もってネタバレサイトで全容をすべて把握してから観に行く若者が増えているという。あらかじめ心の準備や覚悟をせぬまま、唐突にさまざまな感情の起伏を煽られると、その対処に困るから、ということらしい。

20代30代にして、感情に対する向き合い方が、先述した80代の男性とそれほど変わらないことに驚かされる。

続きはYahooニュース 婦人公論
2024/02/21 12:32
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