ご存じのように、日本では人気漫画の実写化が今や定番コンテンツ化している。一方で「原作の世界観が台無し」「芸能事務所ありきの毎度おなじみのキャスティングでイメージと全然違う」など、コアなファンからは酷評されるパターンが多い。

 そういう人気コンテンツに“いっちょかみ”したいオトナたちが骨までしゃぶる、というなんとも日本的なものづくりに辟易(へきえき)した。……かどうかは分からないが、人気漫画家たちがこぞって海外での実写化に踏み切っているのだ。

 その代表が、世界的大ヒット漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)の原作者、尾田栄一郎氏だ。
 尾田氏はこれまで長く同作の実写化に否定的だったという。しかし、Netflixと組んで実写化に乗り出した。その理由を過去のインタビューでこのように語っている。

「ありがたいことにNetflixは、僕が満足するまで公開しないと約束してくれたんです。脚本に目を通して意見を伝え、原作が正しく映像化されるよう番犬のように振る舞いました」(VOGUE JAPAN 23年9月1日)

 結局、尾田氏は実写版の「製作総指揮」に名を連ねて、キャスティングにもかかわり、配信前には「この作品に一切の妥協はありません!!」という直筆レターまで出すほど自信を見せていた。

 結果、実写『ONE PIECE』は世界中で大ヒット。公開2週間足らずでなんと視聴時間が2億8000万時間を超え、続編の制作も決定した。この要因は尾田氏が「原作が正しく映像化される」ことに徹底的にこだわり、それをNetflix側も最大限尊重したことで、原作者も納得のクオリティーが実現できたからだ。

 厳しい言い方だが、もし日本で制作していたらこういうことにはならなかっただろう。テレビ局と映画配給会社、広告代理店による「ワンピース制作委員会」が立ち上げられて、メディアミックスの名のもとで横断的なプロモーションやキャンペーンが行われる一方、尾田氏の「原作が正しく映像化される」ことはそれほど尊重されなかったはずだ。

(略)

日本映画やドラマの「衰退」を引き起こす恐れも

 さて、このような「成功例」が積み上がってきた中で、人気漫画の原作者の立場になって考えていただきたい。実写化させて欲しいという話が、日本テレビのドラマ制作部とNetflixから同時にやってきた。韓国の制作会社でもいい。原作者がどっちを選ぶのかは明らかではないか。

 今回、芦原さんが原作者としての「不満」を訴えたにもかかわらず、日本テレビは「許諾をいただきました」と木で鼻を括(くく)ったような回答したことで、日本中の漫画原作者たちは「明日はわが身」とショックを受けたはずだ。だったら、原作者の意向を最大限聞いてくれるほうに流れるのは当然だろう。

 つまり、日本の映画やドラマが、人気漫画の原作者へのリスペクトなしに作品づくりを続けていけばいくほど実写版コンテンツの海外流出が進んでいくということだ。それは、今や「漫画原作」にすっかり依存しきっている日本の映画やドラマにとって深刻な衰退を引き起こす恐れもあるのだ。

 「日本映画やドラマのクオリティーの高さは世界からも称賛されている。そんなことで衰退するわけがないだろ」と不愉快になる映画・ドラマ業界の人も多いだろう。しかし、「発明をした人」への敬意を欠くことで、国際競争力を失って衰退するのはある意味で、日本の定番の負けパターンなのだ。

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https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2401/31/news045_3.html