https://dot.asahi.com/articles/-/205914?page=1
2023/11/10/ 16:30

ローリング・ストーンズが18年ぶりの新作を発表。40年以上経って完成した”最後のビートルズ・ソング”も発売。今こそ、ロックを聴こう。音楽評論家で朝日新聞編集委員(天草)の近藤康太郎がガイドする。

言葉本来の意味でワン&オンリーだったドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなったのは一昨年。世界最長寿のロックバンド、ローリング・ストーンズも、これでいよいよ終わってしまった。

つまり、ロックも終わった。そんなふうに早とちりしていた粗忽者に、ダイヤモンドも砕く一撃が飛んできた。ストーンズが、なんと新作を出した。オリジナルメンバーのミック・ジャガー80歳、キース・リチャーズ79歳である。中身も、スピード感があって3分以下の短い曲が並ぶ。いまふう。

昔、ミックにインタビューしたことがあり、そのとき「ロックの未来について、どう思います?」と、おぼこな質問をわざとかましたのだがミックは「そんなの知らないよ」。微笑した。いやな感じは少しもなかった。

CDが売れず、配信が主体になり、聴衆は移り気で、曲は60秒の動画向け仕様。「ロックは死んだ」と何度も宣告された。ギターソロなんか聴いてもくれない。でも、そのときその時代で、いい音楽はあるもんだし、自分も創る。変わっていく。転がっていくつもり。 わたしは、そう理解した。 じっさい、1962年結成のストーンズは、ブルースに安住せず、レゲエやディスコやパンクや、時々の音楽的流行を取り入れつつ、しかし芯は揺るがない。だからこそ生き続けられた稀有なロックバンドだった。

なかでも『スティッキー・フィンガーズ』(71年)は、ロックの聖典みたいな1枚だ。ルースなギターのリフ(繰り返し)、ボーカルの扇情、ちょっと遅れて入るドラムズの不穏感。いま聴いてもロックのかっこよさが、見本市のように詰まっている。

60年代末から70年代初めに奇跡の名作を立て続けに出した。そこから、ストーンズは自分たちの音楽を変えた。転がることを、恐れなかった。

変わる。それがロック。

ストーンズと並んで(少し先輩格として)世界中の尊敬を集めるのがビートルズ。まさかと思うが未聴の人がいるならば、人類必須のワクチンだと思って全アルバムを聴きましょう。
最初から全アルバムが難しかったら、よくできているベスト盤の赤盤、青盤(73年)で。
奇跡の名曲銀河系を聴き通して分かるのは、ビートルズはすべてにおいて天才なんだが、なにより、新しもの好き、いたずら好きだったことだ。バンドがいまも存続していたら、ヒップホップよりも、テクノやエレクトロよりも、いちばん実験していたことだろう。

新しい。それがロック。

音楽受容は配信が中心になった。アルバムを通して聴くのは、はやらない。音楽を、歴史順に、時代に位置づけて聴く若い人は、いなくなった。とくに文句はない。ないが、古典的な名盤を1枚通して聴く習慣をつけるのも、いいものだ。聴覚がさえてくる。いままで楽しめなかった音が、好きになる。趣味の幅が広がる。

自分が、〈変わる〉。〈新しい〉音楽が、もっと好きになる。つまり、ロックになる。
大きなお世話と思いつつ、過去名盤のこんな聴き方はどうだろう。

続きはソースをご覧ください