悲喜こもごもだった。プロ野球ドラフト会議2023が26日に東京都内のホテルで行われた。シナリオ通りに事が運んで笑いが止まらない球団もあれば、内心でこんなはずじゃなかった≠ニ苦虫を噛み潰す監督ら編成担当者の姿もあったようだ。果たして、どの球団がドラフトの勝者≠ノなったのか。今年も元ロッテスカウトの本紙評論家・得津高宏氏が独断で採点した。

【得津氏は今年のドラフトをこう見た】今年のドラフトは下馬評で大学生や社会人が豊作と言われていましたが、ふたを開けてみるとBCリーグや四国アイランドリーグで活躍する独立リーグに所属する選手の指名も目立ちました。どの球団も即戦力を求めているということでしょう。

 そんな中で、いい指名ができたと思えるのは広島です。くじ引きの末、常広羽也斗(青山学院大)の交渉権を獲得し、投手を4人揃えました。チームは投手がターニングポイントにさしかかっており、その辺りの現状を踏まえての指名になったと言えるでしょう。新井監督もニンマリだったはずです。

 セ王者の阪神も非常にバランスがいいですね。下村海翔(青山学院大)を単独指名するなど大学生、社会人、独立リーグの投手が計4人。3、4位で高校生2人の野手を指名し、将来性豊かな逸材も集めた。投打で補強ポイントの見極めができています。岡田監督の意見がきちんと反映され、現場とフロントの意思統一もしっかりと成されている何よりの証拠でしょう。

 3球団強豪の末に度会隆輝(ENEOS)の交渉権を獲得したDeNAも2位以下で即戦力の投手、内外野手を基本線とし、きっちり指名できた印象です。西武も左腕の武内夏暉(国学院大)を1位指名し、6人の投手で指名を固めた。投手は何人いてもいいという考えに則っていけば、松井監督、そして西武の編成担当者にとって今年のドラフトは「成功」だったと言えそうです。

 巨人は「B」としましたが、限りなく「A」に近い結果だったと言えます。伝統的にドラフトのくじ引きでは「弱い」とされていたものの、阿部新監督が日本ハムとの競合の末に同じ母校出身の後輩・西舘勇陽(中大)の交渉権を勝ち取った。2位以下の指名も野手、投手と社会人の即戦力を満べんなく揃え、ほぼ思惑通りだったように見受けられます。

 一方で評価を低くせざるを得ないのは、私の古巣・ロッテです。去年まではくじ運が強かったはずが、今年は度会の1位指名に失敗。ただ吉井監督はレギュラーシーズン終盤、CSの最中も「即戦力投手がいない」と嘆いていたはずだけに、どうして最初から投手の1位指名に行かなかったのか。非常に疑問が残ります。

 そして私と同じPL学園出身の後輩・立浪監督が率いる中日は残念ながら「E」。1位で度会を指名できず、長身右腕の草加勝(亜大)を外れ1位に指名しました。しかしながらやはり、今の中日には長打力を誇る即戦力野手が最大の補強ポイント。今年のドラフト候補には目立った大砲がいないのがネックだったとはいえ、昨年の都市対抗野球で5試合4本塁打を放つなど一発を放つ力も兼ね備える「社会人野手ナンバーワン」の度会を逃したダメージはかなり大きいと思います。
 
【得津氏の評価】
 広島=S
 阪神=A
 DeNA=A
 西武=A
 巨人=B
 ヤクルト=B
 オリックス=C
 ソフトバンク=C
 楽天=C
 日本ハム=C
 ロッテ=D
 中日=E

https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/280904