9/8(金) 17:32配信

日刊ゲンダイDIGITAL
23日、レッズとのダブルヘッダー第1試合の2回途中、無失点で降板するエンゼルスの先発大谷(C)ゲッティ=共同

「仮に大谷選手が手術をする選択をした場合、7割以上の確率で投手としてメジャーのマウンドに戻れると考えられます」

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 こう話すのは京都府立医科大学整形外科の木田圭重医師だ。

 右肘靭帯を損傷した大谷翔平(29)が受けるといわれる「ハイブリッド手術」に関してである。

 米ウェブメディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者は日本時間6日、米球界の複数の医療関係者の話として「(大谷は)靭帯を修復するトミー・ジョン手術と人工靭帯を含めた比較的、新しいハイブリッド手術を受けるだろう」と報じた。

「ハイブリッド手術」とは日本では聞き慣れないものだが「米国ではプロ野球選手にも100例以上実施されています」と木田医師がこう続ける。「移植した靭帯の上に強度のある人工靭帯で補強するものです(イラスト参照)。手首などの他の箇所から移植した靭帯は成熟過程で一度弱くなり、強度が回復するのに約半年を要しますが、人工靭帯の強度は一定しているため、リハビリ期間が通常のトミー・ジョン手術(12~16か月)と比べて短縮できます。大谷選手の代理人が話していましたが、今回は前回(2018年)とは違う箇所を損傷したそうなので、CTやMRI、エコーなどで、前回の手術時に腱を結合する際、骨にあけた穴や骨の状態を入念に確認し、問題がなければ手術は可能です。復帰までの期間が短いため、ベテランや契約年数に限りがある投手や社会人選手などに適した手術といえるでしょう」

「7割以上の高確率で二刀流としての復活は可能」
京都府立医大で実施しているハイブリッド手術のイラスト(茶色が移植靭帯、真ん中の緑色が人工靭帯)/(写真提供)京都府立医科大学

 木田医師は「ハイブリッド手術」の執刀経験があり、手術をした大学生や社会人の投手には術後6カ月で変化球も交えて全力投球できるようリハビリプログラムを組んでいるという。

「個人差はあるものの、実戦で登板できるようになるには半年以上を要しますが、手術する時期によってはシーズンを棒に振ることはありません。エンゼルスは手術の有無を発表していませんが、仮に大谷選手がレギュラーシーズン終了直後にメスを入れれば、来季中の二刀流復帰は決して不可能ではありません。もちろん打者として『ハイブリッド手術』を受ける大きなデメリットはない。右投左打の大谷選手は右肘にかかる負担が少ないため、右投右打の選手よりも復調に時間はかからないでしょう」(木田医師)

 肘にメスを入れた投手は実戦に復帰しても新しい靭帯がなじんでいないため、完全復調には至らないのが一般的だ。球威は戻っても制球に安定感を欠いたり、変化球のキレがイマイチだったりする。大谷にしても前回の手術から約2年後の20年に投手として復帰したが、同年は患部の不調もあって制球が不安定に陥り、わずか2試合の登板に終わった。

「ハイブリッド手術のリハビリは体幹強化や股関節の機能改善など、トミー・ジョン手術と変わりません。術後は地味な動作の繰り返しで精神的な強さを求められますが、大谷選手は過去に一度、経験していることから、同じ道を歩いていると実感できれば、精神的に耐えられるはずです。7割以上の高確率で二刀流としての復活は可能です」(木田医師)

 投打に渡って高いパフォーマンスが発揮できるのであれば、早めにメスを入れるのに越したことはない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/495214d20a44598ce5b599e9b90556c959fc1452