今夏も選ばれし球児たちが聖地を大きく沸かせた。いよいよ期待されるのは秋のドラフト会議だ。しかし、高校通算140発を誇るスラッガー、「ボンズ」の異名を持つ大型野手、九州の大砲の「高校ビッグ3」を筆頭に、現場指導者たちとプロ球団の評価にはシビアな溝が横たわっているようである。

 最大の注目選手は、やはり花巻東の佐々木麟太郎(18)だ。アンコ型の体型から繰り出すフルスイングは高校生離れしており、通算140本塁打は文句なしの高校通算記録である。最後の甲子園はノーアーチに終わったが、評価はうなぎ登り。

「長打狙いで大振りばかり繰り返すようなこともほとんど見られない。状況に応じたチームバッティングができるし、コンパクトな打撃も非常にうまい」(セ球団スカウト)

 そんな超高校級スラッガーについては、NPBだけでなく、水面下ではMLBの複数球団も触手を伸ばそうとしていた。かつて菊池雄星と大谷翔平が花巻東に在籍していた当時から同校野球部に足繁く通っていたスカウトらが、今春も麟太郎の実父でもある佐々木洋監督(48)を籠絡≠キべく働きかけていたという。

 だが、当時とは状況が変わってしまった。

「麟太郎は当初、高卒で即メジャー挑戦するとも見られていた。ところが雄星や大谷の時代には秋まで進路を熟考できたのに、MLBのルールが変わり、『インターナショナル・アマチュアFA』の対象選手がメジャー挑戦意思を表明するためには、夏の甲子園が始まる前に登録をしなければならなくなった。その結果として、契約を希望するMLB球団が現れれば、MLBからNPBに身分照会が行われ、国内ドラフトでは指名対象外の選手となる。しかし、その作業は行われなかったようで何の発表もなかった。甲子園を最優先する時期だけに、監督も慌ただしい進路問題で息子を煩わせることができなかったのでしょう」(NPB関係者)

 その一方、即メジャーの選択肢が消滅した佐々木には大学球界からのラブコールが殺到している。

 球界関係者が言う。

「早稲田や慶応をはじめ数多くの名門が猛プッシュしてきているといいます。あくまでも進路の決定権を持つ実父・佐々木監督への打診であって、本人はまだ知らされていないでしょう。そして、たとえ甲子園での戦いが終了しても、佐々木監督は高卒で即プロに行くという結論を表明することはないと思います。プロ入りはもちろん考えているようですが、大学進学への比重が高まっているようです。やはりホームランバッターとしてばかり期待される麟太郎には、打てなくて芽が出ないリスクが付きまとう。もともと親の背中を見て、指導者としての将来も準備したいようです。というのも、成績は学年トップレベルで、中学で生徒会長を務めたほど優秀。大学で教員免許を取得し、そこからプロ入りすることで、セカンドキャリアに母校・花巻東での指導者という道を残そうというわけです」

 とはいえ、麟太郎の進路についてスカウト陣の間では大筋で「意中の球団が交渉権を得れば日本でプロ入り、意中外であれば大学進学というのが基本線」と見る向きがもっぱらだ。そのうえで佐々木監督が「この球団には預けられない」と首を横に振っているのが、意外にもこれまで蜜月だったはずの日本ハムだという。

「佐々木監督は日本ハム前監督の栗山英樹氏の打撃理論に関し、当人がキャスターを務めていた頃から賛同していた。だからこそメジャー挑戦を表明していた大谷も結果的に『任せられる』となったわけです。ところが、そんな昵懇球団≠フ指揮官が新庄剛志監督(51)に代わったことで本来の思惑とは異なってしまった。口では言わないものの、日本ハムへの拒否姿勢が顕著になっている。特に新庄監督が清宮幸太郎(24)に対して監督就任直後、そして今季途中にも言い放った『デブじゃね?』発言を毛嫌いしているようですね」(球界関係者)

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