◇渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇3日 中日2―5阪神(バンテリン)

 早々に連勝の夢は断たれたが、仲地で負けるのは将来への投資と割り切れる。抑えれば自信がつき、打たれても勉強になる。10安打、5失点。首脳陣の配慮で1日余分にもらったが、毎週同じクオリティーの投球を維持する難しさを知った。それだけでも収穫ではないか。
 だけど僕は興ざめした。それはマウンドの仲地ではない。打席の仲地にである。3回無死一塁。当然、犠打のサインが出る。内角高めの速球にファウル、変化球に空振りで追い込まれ、最後は遠く外れていくスライダーにバットを出してしまった。
 「バントの練習くらい、しっかりしておけ」と言いたいのではない。むしろ成功の確率は低いと思っていた。それは仲地が実戦でバントしたことがないのを知っていたからだ。仲地に限らず、今季の中日2軍は投手を打席に立たせたことはない。前回の2打席(三振と併殺打)が、プロでの全て。つまりここで成功を望むのなら、2軍で打席に立たせ、経験を積ませるべきだった。
 しかし、直後(4回、無死一、三塁)に阪神のビーズリーも犠打のサインに応えられなかった。ファウルと見逃しで追い込まれ、最後はファウルで三振。阪神の2軍は3投手で計4打席立たせているが、ビーズリーは含まれていない。彼も1軍での5打席4三振がキャリアの全てである。

 僕の興ざめの理由は、バントの拙さではない。センスと能力に個人差はあるが、セ・リーグに入団する多くの新人と新外国人はこうなるのがわかっているからだ。東京六大学と関西学生を除き、指名打者制を採用している。世界の主要プロリーグで、いまだに投手が打席に立つのはセ・リーグだけ。つまり仲地がバットを持つのは高校生以来。ビーズリーも相当久しぶりのことだろう。「投手も9人目の打者」「代打を出すかどうかの駆け引き」。そんな考えがある一方で、緊張感を欠く打席がさらに増えていく。僕の中ではもう潮時なのだが…。

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