2023年7月24日 06時00分

 コンビニ最大手セブン―イレブン・ジャパン(東京)が6月、海外名門サッカークラブの来日試合の観戦チケットが抽選で当たるとうたい実施したキャンペーンで、車いす使用者らの応募を拒んでいたことが分かった。ウェブサイトに注意事項として「車椅子ご利用や介助が必要なお客様への対応は行っておりません」と掲載。当事者からの問い合わせに「車いす席がないので応募しないでほしい」と回答していた。専門家は「障害者差別解消法が禁じる障害を理由とした不当な差別的取り扱いに当たる」と指摘する。(大西隆)

◆注意書きを見て問い合わせると

 同社は、パリ・サンジェルマン(フランス)、インテル・ミラノ(イタリア)、アルナスル(サウジアラビア)の日本ツアーのスポンサーとしてキャンペーンを企画。7月25日~8月1日、大阪のヤンマースタジアム長居と東京の国立競技場で行われる、計4試合の観戦ペアチケットなどを景品とし、セブンイレブンのレシートを集めて応募する仕組みとした。

 青森県の車いす使用の20代男性は6月半ばごろ、国立競技場の観戦チケットの抽選に応募しようとしてサイトの注意事項に気づいた。問い合わせ窓口で真意を確かめると、担当者は「車いす席は用意していない。抽選には応募しても無駄」などと答えたという。

 国立競技場には約500の、ヤンマースタジアム長居には約340の車いす席が整備されている。セブン&アイ・ホールディングス広報センターは取材に「ジャパンツアー事務局から車いす席が割り当てられず、現地での付き添いなどの対応が難しいことを知らせるために注意事項を掲載した。障害者を差別する意図はなかった。今後は障害者に最大限配慮するよう取り組みたい」と釈明した。

 ジャパンツアー広報事務局は取材に「座席の割り当て権限は当方にあった」とした上で、「スポンサーが実施する観戦チケットキャンペーン用に車いす席を割り当てる必要があるという認識が欠けていた。結果としてキャンペーンから障害者を排除、差別する事態を招いた。深く反省し、おわびする」と非を認めた。

◆スポーツ庁の相談窓口も機能しなかった

 障害者差別の問題に詳しい黒岩海映みはえ弁護士は「セブンイレブンは車いす席の割り当てを要求せず、実際に男性の応募を断った。その客観的事実だけで差別に当たる」と指摘。「物事の設計や企画、立案の段階から障害当事者の声を聞くことが大事だ。方針として確立する必要がある」と言う。

 男性は、スポーツ興行などを巡る障害者差別に関する国の相談窓口であるスポーツ庁障害者スポーツ振興室に対応を要望。だが「差別的取り扱いではと見解を尋ねても回答はなく、改善に向けて動いてくれなかった」と明かす。黒岩弁護士は「国の相談窓口として全く理解のない対応だ。マニュアルを整備し、職員研修をして責務を果たしてほしい」と話した。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/264951