“猿之助ショック”を引きずる歌舞伎界で、大物役者の発言が波紋を広げている。

「主は坂東玉三郎(73)。自身のプロデュース公演『坂東玉三郎 PRESENTS PREMIUM SHOW』に関する、今月5日の記者発表での発言でした」

 とは歌舞伎担当記者。

「公演は9月。会場は東京・南青山のBAROOMで、バーも併設されている100席ほどの小規模なミュージックホールです。玉三郎は“体力的に歌舞伎座など大劇場で公演を行うのが難しくなった。今後はこのように、お客様と近い空間で芸術を届ける活動を軸にしていければ”と、本興行から距離を置く意向を明らかにしたのです」

 言うまでもなく、玉三郎は斯界を代表する大名跡。

「玉三郎は片岡仁左衛門(79)と並ぶ、歌舞伎界きっての観客動員力を持っている。彼らに続く存在が市川團十郎(45)と市川猿之助(47)の二人でしたが、心中騒動で猿之助の復帰が絶望的ないま、玉三郎が実質的に大劇場からの引退を示唆した。松竹には過去に例のない衝撃が走りました」

 松竹関係者が振り返る。

「会見では“大きな役で大劇場の公演を1カ月間、背負うことは体力的に難しい”とも。自他ともに認める完璧主義者の玉三郎は、10年ほど前から体力的な衰えを自覚していました。以来、長時間にわたって踊る『鷺娘(さぎむすめ)』や『京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)』といった大曲を避けていましたし、地方における短期公演も3年前からやめていました」

猿之助騒動の影響

 都内の料亭に生まれた玉三郎は1歳半の時に小児まひを患いながら、努力と持ち前の美貌で人気を博した。

「歌舞伎入りはリハビリ目的で始めた日本舞踊がきっかけで、デビュー当時は足に後遺症が出ていたそうです。それでも“玉さまブーム”を呼んだ当代一の女形に登り詰め、平成24年には人間国宝に認定されました」

 不意に飛び出したスーパースターの弱気発言。松竹幹部は、いまもくすぶる猿之助の騒動の影響を指摘する。

「猿之助の件は彼のセクハラやパワハラがきっかけとされていますが、実は玉三郎にも平成13年に似たようなセクハラ問題が持ち上がっていたんです」

過去のスネの傷

 訴えたのは19歳の元弟子と彼の母親。この男性は13歳で玉三郎に弟子入りしたが、直後から「添い寝の強要や、下半身を触られるなど精神的な苦痛を強いられた」として1200万円の損害賠償を求めていた。

「歌舞伎界ではつとに知られた話ですからね。玉三郎は過去のスネの傷への飛び火を恐れて、記者の取材を避けやすい大劇場からの引退を決意した可能性もある」

 どういうことか――。

「大勢の記者から猿之助に関するコメントを求められれば、過去の汚点が蒸し返されかねない。その点、いまのところ本人への直撃取材はないとか。翌6日付のスポーツ紙は“玉三郎が大劇場から引退”と大きく報じただけでしたね」

 尾上菊五郎(80)と松本白鸚(80)という大看板は体調不良で休演中。猿之助に加えて、玉三郎の“退場”は、歌舞伎界に急速な世代交代を迫っているかのようだ。

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/06251057/

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