ROCK 和樂web 2023.06.02

塚田史香

この記事に合いの手する人
瓦谷登貴子

神社の境内や河原や公園の広場で妖しげな赤いテントを見つけたら、恐る恐る近づいてみてください。「唐組」の旗が立っていれば、それは劇団唐組の移動劇場、通称「紅(あか)テント」です。2021年度に文化功労者に選ばれた唐十郎(から・じゅうろう)が旗上げした劇団のお芝居を観られます。

怪しいものではありませんので、お気軽にお立ち寄りください。と言われても、とても怪しく見えるかもしれません。

ある日、何もなかった場所に現れて、日暮れに電気が灯り、老若男女幅広い世代が列を作り中へ吸い込まれていくのです。やがて赤いビニールの向こうから、音楽や声、笑いや拍手が溢れ出してきます。

怪しくて妖しい紅テントに一度は足を運んでいただきたく、東京・雑司ヶ谷にある鬼子母神の境内に登場した唐組を取材しました。入場までの流れや中の様子を紹介します。

また、紅テントの魅力やその創始者である唐十郎戯曲への思いを、唐組座長代行+演出の俳優・久保井研さん、俳優の稲荷卓央さん、藤井由紀さんに伺います。







紅いテントで半世紀

紅テントのはじまりは、1967年夏。

当時、演劇といえば主に歌舞伎や新劇を大きな劇場でみせるものでした。しかし唐は自身が主宰する劇団「状況劇場」の公演を、新宿・花園神社の境内に建てた赤いテントで行いました。注目を浴び若者たちに支持されます。
花園神社での公演ができなくなると、1969年1月には、東京都(に申請こそしたもの)の許可がおりないまま新宿西口・中央公園に紅テントを建て、中止を求める機動隊に囲まれながらお芝居を強行。日本の戦後の演劇史に残る出来事となりました。
唐は、寺山修司、鈴木忠志(すずき・ただし)、佐藤信(さとう・まこと)たちと、その後“アングラ演劇”と名付けられる新たな演劇の流れを牽引します。

「状況劇場」の紅テントは、日本だけでなく韓国、台湾、バングラデシュ、パレスチナなど世界を巡り、李麗仙、麿赤児、四谷シモン、大久保鷹、不破万作、根津甚八、小林薫、佐野史郎、六平直政など名優・怪優を輩出します。
1988年に解散し、翌年、唐が新たに旗揚げしたのが劇団唐組です。紅テントを受け継ぎ、いまに至ります。紅テントの影響は全国に広がり、今も様々なテント芝居が行われています。なお現在、紅テントが無許可で公演をすることはありません。機動隊に囲まれる心配もありません!

https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/221739/