■大学生の試合を視察
5月13日に東京・味の素フィールド西が丘まで関東大学リーグ第5節の法政大学対筑波大学の試合を見に行ったら、スタンドで都並敏史さんとばったり出会った。1980年代から90年代にかけての日本代表の不動の左サイドバックであり、現在は今年から日本フットボール・リーグ(JFL)に再昇格したブリオベッカ浦安の監督を務めている。

「あれっ、なんで大学リーグを見に来ているのかな?」と思ったら、「いやぁ、天皇杯で当たる筑波大学を見に来たんですよ」と都並さん。

第103回天皇杯全日本選手権は5月20日と21日に1回戦24試合が行われたのだが、浦安は筑波大学と対戦することになっていた。それで、監督自ら偵察に出向いたというわけである。法政大学との試合は筑波大学が5対1で圧勝した。開始3分で左から山崎太新がドリブルを仕掛けてPKを獲得して先制すると(得点は4分)、その後も左の山崎、右の角昂太郎がアグレッシブに仕掛けて得点を重ね、法政大学の反撃を88分の1点だけに抑えて完勝した。

「筑波、強い~」という一言を残して都並監督は去って行った。筑波大学は、日本大学と明治大学には引き分けに終わったものの、5月27日の第6節を終了した時点で4勝2分0敗。得点22、失点5で首位を走っている。6試合で22得点ということは、1試合平均3得点以上。圧倒的な成績である。

一方、都並監督率いる浦安は5月28日の第9節までを消化して、0勝3分6敗で最下位に沈んでいる(毎年のことだが、地域リーグからJFLに昇格したチームにとって全国リーグであるJFLの壁は予想以上に厚いものなのだ)。というわけで、僕も天皇杯1回戦では筑波大学が勝利するのではないかと思っていた。ところが、5月21日に行われた1回戦は点の取り合いの末に、79分に林容平が決めた得点によって浦安が3対2で勝利したのである。さて、JFL最下位のチームが関東大学リーグ首位のチームを破ったこの試合結果は「番狂わせ」と呼んでいいのだろうか?

■各国にあるピラミッド
サッカーの世界では、ほとんどの国にリーグ戦のピラミッドが存在する。たとえば、サッカーの母国イングランドでは20クラブで構成されるプレミアリーグがトップリーグであり、その下に「イングランド・フットボールリーグ(EFL)」が管轄するEFLチャンピオンシップ、EFLリーグ1、EFLリーグ2の3つのリーグがある(各24チーム)。ここまでが、「リーグ・フットボール」であり、その下のリーグは「ノン・リーグ・フットボール」と呼ばれている。

2004年にプレミアリーグが発足する前はもっとシンプルで、「フットボール・リーグ」の1部がトップリーグで、以下2部から4部が存在していた。名称や組織は変わったのだが、上から4つ目のリーグまでがリーグ・フットボールであることには変わりはない。同様にドイツなら、ブンデスリーガと2部(ツヴァイテ・ブンデスリーガ)、そしてその下には地域リーグがあり、イタリアでもセリエAかとセリエBが全国リーグであり、さらにその下に地域リーグが存在する。もちろん、それぞれのカテゴリーのリーグ同士で入れ替えが行われる。ただし、アメリカのメジャーリーグ・サッカー(MLS)は、他のアメリカのプロ・スポーツと同じように入れ替えはない独占的なリーグだ。

■U-22であり第1種のチーム
そして、日本では日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)がトップリーグであり、J1リーグが1部、J2リーグが2部である。それでは、日本の3部リーグとはどのリーグのことなのだろうか?普通に考えれば、J2リーグの下にJ3リーグが存在するので、これが3部ということになる。だが、日本にはもう一つ日本フットボールリーグ(JFL)というリーグが存在する。将来Jリーグ入りを目指すクラブはこのJFLで鎬を削り、上位2クラブが昇格できるのだが、JFLにはJリーグ入りを目指さないアマチュアの企業チームも所属している。たとえばHonda FC(本田技研)やソニー仙台などはJ3リーグ並みの戦力を維持しており、毎年のようにJリーグ入りを目指すクラブの前に立ちはだかってきている。

そして、日本にはもう一つ「年齢を制限しない選手により構成される」第1種チームによるリーグ戦が存在する。

それが、各地域の大学リーグである。大学リーグはもちろん大学生によるリーグだから、事実上はU-22リーグではある。だが、チームは第1種のチームであり、大学生であれば年齢に制限はなく出場できる。もし、リオネル・メッシが大学卒業資格を取りたいと思って日本の大学に入学したら、36歳のメッシが関東大学リーグでプレーすることだって可能なのだ。

サッカー批評5.30
https://soccerhihyo.futabanet.jp/articles/-/98708