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「全て見えていた」絶妙のセカンドアシスト

ドイツの放送局「SKY」の実況はこう伝えた。
「田中対ディフェンス4人! それなのにパスを通した!!」
 あの場面で、エリア手前から田中が力強くドリブルで仕かけた。
4人に囲まれ、ファール気味のチャージで倒されながらも、上半身が地面に触れる寸前に足をのばし、田中はボールを蹴った。
ボールは、相手ディフェンダーの軸足のすぐ脇のコースを通り、味方FWの元へ。
優れたディフェンダーでも、踏み込んだ軸足は容易に動かせない。
だから、パスを通せた。
これを味方FWが素早く外にながし、右SBによるゴールが生まれた。
 チームメイトは、田中の芸当に「お手上げだ」と、頭を抱えるジェスチャーを見せた。
そのかたわらで、田中は力強くガッツポーズをした。
「全て、見えていたからですよ」
 あそこで拳を固く握りしめた意味を、田中はそんな言葉とともに振り返る。

「あのコースにパスを通したのもそうだし、『こうなればゴールになる』と先の展開まで見えていたんです。
『アシストのアシスト』の方が僕は多くて。
もちろんアシストも嬉しいですけど、ゴールにつながる流れが全て見えたうえで意図的に作れたゴールだったから喜んだのです」

今年に入ってからの田中の存在感が増しているのは、数値化できるもの以外からも見て取れる。
ドルトムントのベリンガム顔負けのゲーゲンプレスを見せて相手エリア付近でボールを奪ったり、自陣まで長い距離を走ってボールを奪いきったり、守備のデュエルを連続して挑んでマイボールにしたり……。