本拠・ベルーナドームで行われた12日の東北楽天ゴールデンイーグルスとの試合に、埼玉西武ライオンズの山川穂高(31)の姿はなかった。試合前に出場選手登録の抹消が公示され、球団は「総合的に判断して、コンディション的に抹消」と理由を説明した。

 「文春オンライン」が前日の11日、山川の知人女性が、既婚者である彼から性的な暴行を受けたという被害届を警視庁に出していると報じた。

 山川は昨季3度目の本塁打王に輝いた。今季はふくらはぎの張りで4月10日に離脱。今月2日に復帰し、直近6試合は打率3割1分8厘、2打点。本塁打こそ出ていないが、打撃の状態は上向きつつあった。11日のロッテ戦は「5番・一塁」でフル出場した。試合後、山川本人に文春オンラインの報道内容について確認すると、「コメントは特にないです。僕が今、何か(言えるものは)ないです」とコメント。「(試合で)頑張ります」と活躍に意欲を見せていた。

 その翌日に抹消となったのだ。だから、球団の「総合的に」という文言には強い違和感を覚えた。

 西武の主砲であり、看板選手でもある。明るい性格で人気を博し、本塁打を放ったあとの「どすこい」パフォーマンスは、ファンも一体になって盛り上がる名物になっている。

 3月のワールド・ベースボール・クラシックの歓喜を受け、プロ野球は例年以上の盛り上がりを見せている。新型コロナ禍の規制が解け、声出し応援もできるようになった。パフォーマンスを楽しみに球場に足を運ぶファンも多いだろう。

 山川の肩を持つ気はない。ただ、現時点で司法判断が下ったわけでもない。あいまいな発表は、かえって臆測をよび、ファンの心証を悪くするだけではないか。球団側により詳しい理由をたずねたが、答えはかたくなに変わらなかった。

 けがや事態を重くみての抹消ならば、そう発表すればいい。山川が文春オンラインの報道によって心理的に追い込まれたのであれば、所属選手の心の健康を守るのも球団の仕事だろう。ただし、ファンへの説明は、どんな時も、丁寧かつ誠実になされるべきだ。
朝日新聞社
https://news.yahoo.co.jp/articles/87362d497c98ca3ac1191a0f5ce28f6ad9d3a4cd