箱根駅伝で優勝12回を誇りながら近年は低迷する日大の新監督として、昨年の全国高校駅伝で岡山・倉敷高を3度目の優勝に導いた新雅弘(しん・まさひろ)前監督(62)が就任したことが10日、分かった。11日に相模原ギオンスタジアムで開幕する関東学生対校選手権から早速、チームを指揮する。昨年10月の箱根駅伝予選会で3年連続の敗退を喫した日大は「新・新監督」のもと、第100回記念大会で復活を期す。

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 新監督は日大出身で4年時の1983年箱根駅伝で10区を走った経験を持つ(区間11位)。卒業後、実業団の日本電気ホームエレクトロニクスで3年間、競技を続け、86年に母校の倉敷高の教師として着任。同時に陸上部のコーチとなった。94年に監督に就任し、2016年、18年、22年と3度も全国高校駅伝を制した。情熱的な指導で、東海大のエース石原翔太郎(4年)ら好選手も多く育成している。今年4月に倉敷高監督を退任した名指揮官に日大が再建の切り札としてオファー。関東の長距離学生ランナーにとって箱根駅伝と並ぶ春のビッグイベントの関東学生対校選手権を前に新監督の就任が決まった。就任が内定した後、日大トップの林真理子理事長(69)も新監督と面会し、直々に期待の言葉を送ったという。

 日大は箱根駅伝で優勝(12回)、出場(89回)ともに歴代3位の名門。しかし、近年は苦戦が続く。2020年1月の箱根駅伝本戦で18位に終わり、6年連続でシード権を逃した。その結果を受け、同年6月に若手の武者由幸監督が退任。関東学生陸上競技連盟の名誉会長で当時77歳の青葉昌幸監督が急きょ就任した。1990年度に大東大の監督として史上初の学生駅伝3冠に輝いてから30年。大東大監督を退任した2000年以来、20年ぶりの現場復帰だった。日大OBの大ベテラン監督は東京・稲城市の選手寮内にある監督室に住み込み、チーム強化を図ったが、成果は実らず、2020年10月の予選会はチーム史上ワーストの18位で大敗した。

 結局、青葉監督は就任から10か月後の2021年3月末で退任。後任には小川聡監督が就任した。日大OBの小川監督は、1990年代前半はコーチの肩書ながら、実質的な監督として日大を率いた。横浜銀行女子監督に転身した後、2001~08年、2013~16年に日大監督を務めた。事実上、4度目の登板だった小川監督もチームを立て直すことはできず、2021年の予選会はチームワースト記録をさらに更新する21位で2年連続で敗退した。

 2022年、ようやく底を打ち、上昇気配に。6月の全日本大学駅伝関東選考会で7位通過を果たし、3年ぶりの伊勢路への復活出場を決めた。しかし、その後、小川監督の体調が悪化し、7月末で退任。10月に肝硬変のため、亡くなった。小川監督不在で戦った予選会では前年より八つ順位を上げて13位まで挽回したが、通過ラインには約3分及ばず、3年連続で本戦出場を逃した。

 日大駅伝チームは2017年に練習拠点を世田谷区八幡山から稲城市に移したが、今年、6年ぶりに八幡山に戻した。通学など利便性に優れ、伝統と歴史がある八幡山という原点で選手たちは練習に励んでいる。そこに「高校駅伝日本一」の名将、新監督が就任。大学駅伝の指導は初めての新監督を元監督の武者コーチが支える。名門復活への態勢は整いつつある。

 2019年の全国高校駅伝で宮城・仙台育英を優勝に導いた真名子圭(まなこ・きよし)監督(44)は昨年4月に大東大の監督に就任し、チームを4年ぶりの箱根駅伝出場に導いた。同じく「高校駅伝日本一監督」の肩書きを持つ新監督には同様の手腕が期待される。

 5月11日~14日に関東学生対校選手権。6月17日に全日本大学駅伝関東選考会。そして、10月14日に箱根駅伝予選会。重要な大会が待っている。第100回記念大会の箱根駅伝で4年ぶりの復活を目指す「シン日大」の戦いが始まる。

報知新聞社
https://hochi.news/articles/20230510-OHT1T51268.html
2023年5月11日 5時0分
スポーツ報知