マハール有仁州2023年3月18日 14時00分

 大阪と北陸を結ぶ特急「サンダーバード」を相手に打撃を磨いてきた球児がいる。第95回記念選抜高校野球大会に臨む北陸(福井)の1番打者・水野伸星選手(2年)だ。18日の1回戦第2試合で高知と対戦する。

 水野選手は福井県鯖江市から福井市にある学校までJR北陸線で通っている。利用するのは自宅最寄りの無人駅の北鯖江駅。1時間に1、2本ほどの列車を待つ間、最高時速130キロのサンダーバードや名古屋へ向かう特急「しらさぎ」が駅を通り過ぎていく。

 水野選手はこれを「練習」の機会にした。列車を速球に見立てているのだ。

 ホームや踏切で列車が目に入ると、投球動作に入った相手投手を想像し、左打者として右足を上げる。列車の先頭が自分の真横に来たと同時に右足を地面に下ろす。タイミングがばっちりならバットでボールをとらえたイメージが頭の中に広がる。

 「特急練習」のかいあってか、1年生から名門・北陸の先頭打者に定着。昨秋の北信越大会決勝では3安打を放つなど、春の甲子園出場の原動力となった。続く明治神宮大会の準々決勝でも、3打数2安打と活躍し、4強入りに貢献した。

 1人で通学している時は、駅で堂々と足を上げられるが、友達と一緒の時はさりげなく右足をすらせて練習しているという。周りの選手たちは「そんなことしてるんですか」と笑うが、水野選手は「成果が出ている」と感じている。(マハール有仁州)

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