さて、なぜ三部作が驚きなのか? それには補足解説が必要だ。1977年夏に『宇宙戦艦ヤマト』が劇場公開され、アニメブームの基礎が築かれる。以後、『科学忍者隊ガッチャマン』『あしたのジョー』『アルプスの少女ハイジ』など、歴代の傑作アニメが続々と劇場映画化される。
だが、その多くはテレビ用のフィルムを再編集し、2時間前後にストーリーを要領よくとりまとめたもが大半だった。
「総集編」「名場面集」として手際よくまとまったものではあったが、物語とドラマを追っていくと、どうしてもテレビでの感動のニュアンスが抜けてしまう作品が多かった。
 
一方、『機動戦士ガンダム』は大河ドラマ的な構成をとっており、ゆったりと流れる時間の中で生まれる微妙な人間関係の変化や感情の機微を重視している。既成の映画化手法では「ガンダムらしさ」が損なわれてしまうのだ。
 
富野総監督以下メインスタッフにとっては、オリジナルのテレビの雰囲気が崩れるくらいなら、映画化しない方が良いという不退転の意志があったに違いない。だから、問題になりかねない覚悟で構想を先行発表したのだろう。結果的に、この4部構想を3部にダウンサイジングすることで、映画化は出発する。
 
とは言いながら、「全3部」ということも保障の限りではなかった。
第1部がヒットしなければ、2部、3部はない。

それは、第1作目のメインタイトルに「I」の文字がフィルムに焼き込まれていないことからも分かる(商品上は「I」がついている)。
 
このようにして、「背水の陣」に近い覚悟で全3部作構想はスタートしたのであった。
http://www.gundam.jp/tv/world/archive/kataru01.html