“伝説のドラマ”とされている作品がある。2000年にTBS系列で放送された『池袋ウエストゲートパーク』だ。これが今年になってNetflixで配信開始。再放送ドラマにもかかわらず、Netflixの人気作品ランキング日本トップ10(テレビ部門)で2週連続3位、3週目も4位という好調な滑り出しを見せている。

 2週目にいたっては、同時期に配信開始された『舞妓さんちのまかないさん』などのNetflixオリジナルの最新ドラマを抑えての3位という堂々たる“再ヒット”。ここにはどんな理由があるのか、探ってみたい。

■キャストも制作スタッフも豪華すぎる

 この作品を知らない方、忘れている方もいると思うので、まずは『池袋ウエストゲートパーク』(以下『I.W.G.P.』)とはどんなドラマだったのか、おさらいしておきたい。

 『I.W.G.P.』は2000年4月から6月にかけてTBS系列で放送されたドラマで、当時29歳の宮藤官九郎が初めて連続ドラマの脚本を担当した作品だ。プロデューサーの磯山晶とはこの作品のあともタッグを組み『木更津キャッツアイ』や『タイガー&ドラゴン』、第29回向田邦子賞を受賞した『うぬぼれ刑事』といった名作を送り出し続けることになるが、その起点となった作品である。

 メイン演出は、当時45歳で『金田一少年の事件簿』や『ケイゾク』のヒットで波に乗っていた堤幸彦。主題歌はSADS、音楽にはKICK THE CAN CREWとしてメジャーデビューする前年のKREVAが名を連ねていたりと、すでに評価されていた者、その後評価されることになる者が絶妙なバランスで集っていた。

 その後開花することになる才能は、スタッフだけではない。

 主人公マコトを演じたのはTOKIOの長瀬智也。「めんどくせえ!」が口癖なのに、困っている人を放っておけず、喧嘩も強い。女性にはモテるが安易に手を出さないという、男も憧れる主人公像だ。すでにこれが6本目の連ドラ主演作だった長瀬だが、この作品を機に男性人気も広がり、俳優としての評価を盤石なものとした。

 その他のキャストたちも、このドラマの後にどんどんと“主演級”になっていく。『I.W.G.P.』は2000年に放送された後、2003年3月に『スープの回』としてスペシャル版が放送されるが、まずはその3年間だけでも多くの俳優がブレイクした。

 マコトの高校時代の同級生で、主要キャラの中でも絶大な人気を誇る「キング」を演じた窪塚洋介は、宮藤官九郎が脚本を担当した2001年公開の映画『GO』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝くなど、その3年で計5本の映画に主演した。

 『スープの回』放送直後の2003年4月クールでは、『I.W.G.P.』で下っ端ヤクザを演じた妻夫木聡の連ドラ初主演作『ブラックジャックによろしく』、マコトが心惹かれるも謎多き女性を演じた小雪の連ドラ初主演作『きみはペット』が同じTBSで放送された。1月クールには、ドラマのキーパーソンを演じた坂口憲二の民放初連ドラ主演作となる『いつもふたりで』も放送されている。

 マコトの友人役を演じ、当時はジャニーズJr.だった山下智久は、2003年11月にCDデビュー。同年末には、敵か味方かわからないクセのある刑事を演じた渡辺謙が、映画『ラストサムライ』の公開で世界的俳優に脱皮するという出来事まであった。

 放送からわずか3年の間に『I.W.G.P.』に出ていた面々が一気に第一線に躍り出たのである。

 それ以降も、マコトの親友役を演じた佐藤隆太が2008年に『ROOKIES』で連ドラ初主演、マコトの同級生で引きこもり役だった高橋一生の実力が2017年の『カルテット』等で広く世に知られることになり、ちょっとドジな警官役の阿部サダヲが2019年には大河ドラマ『いだてん』で主演俳優に……と、それぞれに俳優たちが活躍することで、時を重ねるほど、『I.W.G.P.』の豪華感は増していった。

■2000年代の若者に刺さりまくったカルチャー

 今から見れば超豪華キャストの揃ったドラマだが、放送当時の平均視聴率は14.9%。当時の基準で考えても、もちろん悪くはない数字だが、同じ2000年の大ヒットドラマ『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』が32.3%、『やまとなでしこ』が26.4%だったことを考えると、大ヒットとは言い難いラインである。

 とはいえ、当時の若者への衝撃はすさまじいものがあった。筆者は当時中学3年生だったが、PHSの単音の着メロを、主人公マコトと同じ『Born to Be Wild』にしている生徒が教室の中にあふれていたのを覚えている。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/d7529447fb9044503b539cb8a5ab87b558c5efaa