毎年4月になると、東京・上野にある東京藝大のキャンパスには、そんな過酷な入試を突破してきた芸術家の卵たちが期待を胸に集まってくる。美術学部彫刻科に入学した上原真理恵さん(仮名)もそうした新入生の1人だった。

 厳しい受験を勝ち抜き、これからは国内随一の大学、素晴らしい環境で彫刻に没頭できる。上原さんは大学生活を楽しみにしていた。しかし、その期待はスタートから裏切られる。

 アトリエの前方にはステージが用意され、教授陣には「観覧席」が設けられ、学生たちはステージと教授たちの間に置かれた低いテーブルの前に座るというスタイルがお決まりなのだという。

あまりに性的で、ありえない新入生歓迎会
 新入生を迎えるための会に、なぜステージがあるのか。

「彫刻科の新歓では毎年、新入生は全員、一発芸をしないといけないんです。一発芸は大体、セクシャルなもので、それも男性が喜ぶようなものです。たとえば、男子学生が音楽に合わせて一枚ずつ着ている服を脱いでいくのですが、服の下に何枚もパンツを履いてたり……。女子学生はレオタードやスクール水着など、できるだけ身体が露出するような衣装を身につけたり、亀甲縛りをした女子学生もいました。ショックでした」

大学生の新歓にふさわしくないワードが飛び出して驚き、思わず「亀甲縛りとは、SMプレイでみるあれですか」と確認してしまった。

「はい。SMのあれです。私たちのときは、グループで一発芸をすることは許されなくて、1人ずつやらされました」

 上原さんも、身体のラインがはっきり出るような衣装を着て、モノマネの一発芸を披露させられた。ショックを受ける上原さんに、さらに追い討ちをかけたのは、一発芸のあと、司会をしていた3年の男子学生から、胸のサイズを聞かれたことだった。すでにお酒が入り、酔っていた男子学生の言葉に、多くの学生が笑っていた。

https://bunshun.jp/articles/-/60020 2023/01/17