思わずわが耳を疑った。

 今月、都内ホテルで行われた記者発表の席上のことである。新規大会主催者と一緒に登壇していた日本ゴルフツアー機構(JGTO)の青木功会長がぼそりと呟いた一言だ。

 主催者に、日本男子ツアーが世界から取り残されている現状について質問したところ、

「何もできないんですよ」

 と青木会長の口から飛び出たのだ。

 この一言が男子ツアー低迷の現状をよく物語っているのだが、組織のトップに立ちながら、まるで他人事のようだから驚きだ。

 この日の会見は来季欧州ツアーとJGTOとの共催大会が日本で初めて開催されるという重大な内容をご本人は分かっているのだろうか。

 男子ツアーはもう何年も低迷から抜け出せずにいる。試合数はいっこうに増えず、人気も女子ツアーに奪われ、世界からも取り残される一方だ。

 そんな窮状を見かねて、「世界のアオキのビッグネームならなんとかなるのでは」と会長に選出されたはずだ。

 ところが現状は好転するどころか、むしろ悪くなっている。それは青木会長だけの責任でないことは確かである。

 日本はJGTOに限らず、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)も日本プロゴルフ協会(JPGA)も一部主催大会を除けば、多くの大会に選手を派遣・管理する主管に過ぎず、一切の権限はスポンサーである主催者に委ねられている。

 開催コースの選定も、競技日程、テレビの放映、チケット販売、大会運営と主催者任せである。

 新たに始まる欧州・日本の共同大会もすべて主催者(スポンサー)の粘り強い交渉・努力によるものであり、JGTOは何もしていないのも同然だ。

 こんな前時代的な組織は海外にも見透かされている。世界のゴルフ界はすでにグローバル時代を迎え、各ツアーともゴルフ発展のために緊密に連絡を取り合っており、メジャーや五輪出場も世界ランキングが基準になる。

 その世界ランクも時代に合わせて改定され、現在は各国ツアー開催コースなどの難易度(フィールドレーティング)でポイントが査定される。だが主催者の都合でコースが決められる日本では、その査定ポイントが極端に低く、マスターズなどのメジャー優勝の100ポイントに比べ、今年日本最高権威の日本オープンに優勝した蝉川泰果がわずか8.57ポイントしかない。このままでは日本選手は国内でいくら活躍しても、メジャー出場基準の世界ランク50位以内どころか、100位にも入れない。

 しかしJGTOは何も手を打ってこなかった。国内大会でもレベルの高いコース選定をスポンサーと交渉するわけでもなく、また世界基準は72ホール完遂なのに、主催者やテレビ局の都合で簡単に短縮する。世界で活躍した青木会長は、そのいびつさは当然承知しているはずだ。なのにそれらを改革しようともせず。「何もできないんですよ」というのは、「何もしない」ための言い訳にしか聞こえてこない。一体何を目的に4期もの長期政権に固執するのだろう。そろそろ新組織に生まれ変わった方がいい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/adbf4f2a1c38f2e4d02efdba69f41fe3eeb2aec5