現在、最新作の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が放送中ですが、定期的にファーストガンダムから見返したくなる往年のファンも少なくないはず。40年以上前にTV放送された作品だけに、最近の作品に比べると絵柄などに古さを感じる人もいるかもしれませんが、視聴するたびにいろいろと考えさせられる傑作です。

 何度も見返していると「アレッ」と思う不思議なシーンもあり、それが狙い通りなのか、それとも何らかのミスなのか判断がつかないことも……。そこで今回は筆者がずっと気になっていたTV版『機動戦士ガンダム』の「謎シーン」について振り返ります。

●突然しゃべり出したガンダム
 最初に紹介する疑惑シーンが飛び出したのは、第18話「灼熱のアッザム・リーダー」でのこと。マ・クベとキシリア・ザビが乗るモビルアーマー・アッザムと交戦したアムロ。アッザムが放った特殊兵器「アッザム・リーダー」により、ガンダムの表面部は4000度の高熱にさらされます。

 この絶体絶命のピンチのなか、唐突にガンダムのコクピット内にやけに甲高い機械的な音声が流れ出します。その謎の声は「パイロット及び回路保護のため、全エネルギーの98%を放出中」と伝え、どうやらガンダムに備わっているコンピュータの音声であることが判明します。

 コンピュータの声はパイロットと会話が成立するわけではなく、一方的に状況をアナウンスしただけですが、機体が勝手に全エネルギーの98%も放出したのもビックリ。これにはアムロも「98%? それじゃ動けない!」とツッコんでいました。

 それにしても気になるのは、ガンダムがしゃべったのは後にも先にもこの第18話の1回限りという点。それ以降はアムロがガンダムの音声機能をオフにしたのでしょうか。謎は深まるばかりです。

●ビーム・ライフルを弾いたザクレロ
 第32話「強行突破作戦」に登場したのは、開発途中で放棄されたジオン軍の宇宙戦用モビルアーマー・ザクレロ。そのテストパイロットだったデミトリーは上官のトクワンの仇討ちのため、ザクレロを持ち出して勝手に出撃します。

 そのザクレロがハヤトのガンタンクと交戦中、アムロの乗るMAモードのガンダムは遠距離からビーム・ライフルを発射。ビームのエフェクト的に当たったようにも見えましたが、ザクレロは無傷。アムロは「外れたのか?」と怪訝な表情を浮かべます。

 さらにガンダムとザクレロの一騎打ちに突入し、両機のすれ違いざまにガンダムは再度ビーム・ライフルを発射。今度は確実にザクレロに直撃したはずですが、ビームが弾かれたようになぜかノーダメージでした。

 ザクレロがビーム用のバリアでも展開していたのなら理解できますが、Iフィールド・バリアを搭載したのはビグ・ザムが最初のはず。なぜザクレロにビーム・ライフルが効かなかったのか謎に包まれています。

●ジオングのコクピットの不思議
 第42話「宇宙要塞ア・バオア・クー」のなかで、シャア・アズナブルはニュータイプ専用機・ジオングに搭乗。このときジオングの胸部にあるコクピットに乗りこむシーンが描かれています。

 そしてガンダムとの激闘の末、第43話「脱出」でジオングは胸部をビーム・ライフルで撃ち抜かれ万事休す。……かと思いきや、胸部にあるコクピットにいたはずのシャアはいつの間にかジオングの頭部にいて、被害を受けた胴体部を切り離して離脱に成功します。

『ガンダム事典』(講談社刊)によれば、ジオングには頭部と胸部の二箇所コクピットがあるとのこと。ただ、シャアはその胸部コクピットのほうに乗りこんでいたので、アムロに撃たれた瞬間に頭部まで移動するような余裕はなかったように見えます。いつ、どのように頭部のコクピットに移動したのか謎のままです。

 もしかすると合体ロボット作品の主人公機のように、ジオングはコクピットごと移動するような特殊なギミックを備えていたのかもしれませんね。

 作品を見返すたびにいろんな発見があるTVアニメ『機動戦士ガンダム』。このような細かい部分を今さら指摘するのは野暮かもしれませんが、疑問に感じた部分に自分なりの解釈を見出すのも、ガンダムの楽しみ方のひとつと言えるのではないでしょうか。

マグミクス2022.12.16
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