「逆転のキングオブコント」がいまや「第一ステージのトップ抜けしか優勝できない」状況に変わった経緯
https://news.yahoo.co.jp/byline/horiikenichiro/20221009-00318852

堀井憲一郎 コラムニスト

■もう一度見たいユニットが多かった

キングオブコント2022はビスケットブラザーズが優勝した。

2本目の「女友だちがときどき男になる」という世界はかつて見たことのないものであった。その世界観とテンポに圧倒された。

1本目は、かなり不思議な世界であった。

1本目で敗退した7組のうちでも、まだもう一本みたいな、とおもったグループはたくさんあった。

審査員も採点もまた、その傾向をあらわしていた。

■ファイナルに上がって欲しかった人たち

KOC2022では、個人的な感想としてももう一度見たいユニットが多かった。

「や団」の死んだふりの長さと死体処理の速さには痺れた。

「コットン」の証拠バスターの活躍には立って拍手してしまった(家のテレビの前で)。

この2組がファイナルに進んだのはすごく嬉しかった。

ほかにもクロコップのパフォーマンスはずっと楽しかった。笑うというよりずっと楽しい時間が続いて、この世界、2本目もみたいなあとおもっていた。

かが屋の二人の、あのゆるやかな表情の変化には引き込まれるばかりである。別の状況での二人をまた見たいなあと強くおもわせていた。

吉住(「最高の人間」)が「逃げて」といった瞬間に笑いながらぞわっとした。こういう気分はかつて経験したことがない。

もちろん他チームもそれぞれ味わいがあり、おそらく見てる人みんなが、決勝に進んだ3組ではない他のどれかを見たいとおもったのではないだろうか。

なぜあの人たちが決勝に進まないでこいつらが…という意見が出るのは、それはつまり今回のレベルが異常に高かったということの証左だろう。

■2本目への対策が高度化している

この、優勝すれば人生が変わると期待される大会に向けて、人生を賭けた対策がより緻密になってきているようにおもう。

2本目のパフォーマンスレベルがものすごく上がっている。

少し前までは、1本めで大受けするも2本めでやらかす、というのを何回か見かけた。

ほぼ同じネタを繰り返すので受けなかったり(そりゃそうです)、まったく違う世界を見せて完全にすれ違ったり、松本人志に84点つけられて最終ステージでぶくぶく沈んでいったり、2本目もまた受けさせるということは非常にむずかしいのだ。

■連続して2本見せるための準備

いまは、連続で見せて必ず受けるネタを2本用意しているのがわかる。

連続して見せるということが徹底して考え込まれている。

2本の世界は完全に変える必要はなく(まったく変えると評価が低くなることがある)、隣接している世界観のなかで、別の笑いを取っていくという戦略が必要で、それをきっちり考えぬいているのだ。

先達の失敗をもとに、強く対策してるとおもう。

1本のネタで尽きてしまうグループがいたのは、そうおもうと、わずか数年前であるが、はるか昔のことになったのだ。いやはや。

最初を突破すれば勢いで何とかなるんじゃないか、という荒っぽい考え方がこの世界から消えてしまっている。

■4年連続、第1ステージトップの優勝

今年で4年連続、第1ステージのトップがそのまま優勝した。

2022年 ビスケットブラザーズ
2021年 空気階段
2020年 ジャルジャル
2019年 どぶろっく

第1ステージからトップで勝ち抜いた四組である。

これがふつうパターンの印象が強くなってしまったが、でもそれまでは「逆転のKOC」の時代であった。

■「逆転のKOC」だった時代

「逆転のKOC時代」を振り返ってみよう。

2015年
第1ステージ一位通過は「ロッチ」。
彼らがかつてないほどの伝説の「やらかし」をやってしまい、大コケにこけ、10点差を逆転されて「コロコロチキチキペッパーズ」に優勝をさらわれた。

伝説のやらかし回でもある。

2016年
「ライス」と「ジャルジャル」が第1ステージ466点の同点で一緒に1位で抜けた。
最終ステージでは6点差をつけてライスが優勝した。
ジャルジャルから見れば、1位で抜けたけど優勝できなかったことになり、逆転ではないが、トップで抜けても優勝できなかった(グループがあった)年となる。

2017年
第1ステージを「にゃんこスター」が1位で抜け、2点差だった「かまいたち」が最終ステージで逆転して優勝している。…
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