プロレスラーはどのくらい稼いでいるのか? 意外と公式なデータは少ない。面と向かって「ギャラはどのくらい?」と聞かない暗黙の了解もあるらしいのだが、いろいろ関係者に話を聞くと、好きでないとやっていられないリアルな現実があらわになってきた。

 いま日本には大小合わせて約60のプロレス団体があり、プロレスラー選手名鑑では1052人の選手が掲載されている。このうち男子が790人、女子が262人という内訳だが、もともとプロレスだけで飯を食っているのは10分の1程度。大半のレスラーはアルバイトをしないと食っていけないそうだ。

 そこにコロナ禍だ。試合数が減り、密を避けるために入場できる観客の数も減らさざるを得ず、売り上げの減少とともにファイトマネーもどんどん下がっている。

 とはいえ、稼いでいる団体もある。稼ぎ頭の筆頭格は新日本プロレスの所属選手たちだ。トップクラスの人気選手になるとファイトマネーのほかイベント出演料、グッズのロイヤルティー、CM出演料など合わせて年収3000万円は下らない。そのほかメジャーと呼ばれる大きなプロレス団体に所属していれば固定給として月給がもらえ、試合ごとのファイトマネーも支払われるため、年収1000万円クラスのレスラーも少なくないそうだ。

月給制であれば、たとえ試合数が減って1試合ごとのファイトマネーが入ってこなくても当面の生活には困らないが、どこの団体にも所属しないフリーの選手や、所属していても弱小のインディー団体だと、試合減が即収入減になってしまう。

 キャリア10年の中堅どころのフリーの選手は、コロナ前は1試合につき2万円+交通費をもらっていたが、コロナ禍でファイトマネーは半分の1万円に。交通費が出ないケースも増えたという。

「交通費のことを考えたら赤字。赤字の補填は試合会場でのグッズ販売に頼っている。自分のブロマイド写真を作ってサイン付きで500円とか1000円でお客さんに売ってなんとかしのいでいる」

 いっそ「1万円のギャラじゃ安いので出ません!」と断ればいいし、無理して出ることもないと思うのだが、難しい事情もあるそうだ。

「ギャラでもめてオファーを断ると、あの選手はギャラにうるさい、めんどうなヤツだという変な噂が広がってしまうのです」

 今年に入って行動制限も減り、少しずつ試合数は増えているが、団体所属の若手選手を優先して出場させるため、フリーの選手には、なかなか声がかからない状態が続いている。

 プロレスラーとしての減収分は、アルバイトを増やして糊口をしのぐ。またフリーの選手は個人事業主。新型コロナの影響により前年同月比で売り上げが50%以上減少していると、経産省の持続化給付金請求の対象となり、約数十万円の給付を受けられ、それを活用している選手も多いという。

 まさかプロレスラーがコロナ対策金で救われているとは、想像もしなかった。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/310472