8/8(月) 11:00
スポーツ報知

猪瀬直樹氏、安倍晋三元首相の「国葬」に異議あり「なぜあんなに急いで決めたのか」

先月の参院選で初当選した猪瀬直樹氏。安倍晋三元首相の国葬について私見を語った

 安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件から、8日で1か月が経った。この間、事件の背景に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の存在が浮き彫りになり、政治家との関わりが問題となっている。事件から間もなく決まった安倍氏の国葬を巡っては、国論が二分された状況だ。先月行われた参院選で比例代表で立候補し初当選、5日に日本維新の会・参議院幹事長に就任した、元東京都知事で作家の猪瀬直樹氏(75)がスポーツ報知の取材に応じ、こうした現状について独自の見解を語った。

 銃撃事件が起きた7月8日。猪瀬氏は、2日後に迫った参院選の街頭演説のため大阪に向かっていた。正午から梅田駅前で演説を開始。一旦、話し終えた午後0時20分頃、自身のスマートフォンを見ると、事件が報じられていた。安倍元首相が撃たれて心肺停止したとの報道に、「まさか」と目を疑った。すぐに松井一郎代表と連絡をとり、遊説の中止が決定。東京にとんぼ返りしたという。

 戦後、日本で政治家が襲撃される事件はあったが、銃撃による殺害はまれだ。小泉政権時代に道路公団民営化に尽力した猪瀬氏は、たまたま事件前日に妻で画家の蜷川有紀さんに次のように話していたという。「道路公団民営化の時も『殺すぞ』とか様々な脅しがあって心配していたけど、日本では銃で撃たれることはないから大丈夫。ナイフとかなら、近づいてくれば避けられる」とタカをくくっていた。「そうしたら、翌日に安倍さんが銃撃されてしまった」と、想定外の事態に驚がくした。

 安倍氏とは、第一次安倍政権時代からの付き合い。首相公邸で何度も食事をした親しい間柄で、都知事時代の2013年には、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで行われた五輪招致の最終プレゼンテーションをともに行った。「東京五輪を一緒に推進し、招致に成功したのが、強く印象に残っている」と懐かしそうに振り返り、人柄について「警戒心があまりなく、気がいい人だった」と残念がった。

 ただ安倍氏の国葬に関しては、異議を唱える。事件からわずか6日後、岸田文雄首相が国家の儀式として国費をもって行われる国葬の実施を発表したことに「決定するのが、早すぎる。なぜあんなに急いで決めたのか」と疑義を呈した。

 首相経験者の国葬は1967年の吉田茂元首相以来で、戦後2例目。「吉田茂元首相は、占領された日本の国家主権を回復したという功績がある。一方で沖縄返還を成し遂げノーベル平和賞に選ばれ、国益に貢献した佐藤栄作元首相は、国葬ではなく国民葬だった」。3公社の分割・民営化を達成しながら、レーガン大統領と安定した日米関係を構築し、19年11月に亡くなった中曽根康弘元首相は、内閣・自民党合同葬だった。

 そうした前例を踏まえ「歴代の首相と比べると、安倍さんは何か具体的に成し遂げたことがそれほどあるわけではないと思う。国家体制を変えるところまでいっていない」とし、「(国が一部費用を負担する)国民葬や合同葬が妥当ではないか」と私見を語った。

 銃撃事件の全容はまだ明らかになっていないが、山上徹也容疑者は、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に入信し、「多額の寄付をし、家庭が崩壊した。教団を(韓国から)招き入れたのが岸信介元首相。だから(孫の)安倍元首相を殺した」などと供述。その後、自民党の中に旧統一教会の関連団体のイベントなどで祝辞を送ったり、献金を受けるなどした議員が多数いて、野党にも接点を持つ議員がいることが判明した。

 事件後に浮かび上がった政治と旧統一教会の知られざる関係。2015年に旧統一教会が名称変更したことに関して疑問の声も上がっている。こうして次々と新たな事実が明らかになる状況に、「岸田首相ははっきりさせなくてはならない。信教の自由とカルトは別だから、明確に分けなくてはならない。実際にフランスでは『反セクト法』という法律ができて、そういった団体を取り締まっている。日本もそうした法律を作るべき」と提案した。

 参院選では自民党が63議席を獲得し、改選議席の過半数を獲得した。だが一方で比例代表の得票数では自民党が34%を占め、日本維新の会が15%、立憲民主党が13%、公明党が12%と続く。「全国比例の得票数を見れば、自民はそれほど勝っているわけではない。これを踏まえて民意が何なのかを見ていくべき。批判も受け止めなくてはならない立場にある」

https://news.yahoo.co.jp/articles/ba298456941b18d93d8eac2cdd8445191df13092