ヌーやカバなど「姿は知っているが声を知らない動物」の鳴きまねも、なぜか納得させられてしまう研究者のような語り口。生真面目なたたずまいから繰り出される「両足のふくらはぎがつってしまったおじさんのような」フクロテナガザルの鳴き声は爆笑を呼ぶ鉄板ネタだ。

 7月23日にはもみじホール城山(相模原市緑区)の「しろやま寄席」に登場。第21回さがみはら若手落語家選手権で優勝した柳家吉緑、準優勝の三遊亭好志朗と共演する。「二つ目の落語家さんは短い期間に見違えるほど芸が進化していることがある。成長著しい2人との共演が楽しみです」と期待を寄せる。 

来春、五代目江戸家猫八を襲名することが決まった。「父は『精進し続ければ必ず落語家の師匠方やお囃子(はやし)さんが見ていてくれる』と言っていました。大きな名前ですが、襲名のお声がけをいただけたことに感謝しています」と晴れやかな表情を見せる。「江戸家らしい“品”と、ウグイスの鳴きまねの“型”を大切にしながら、自分が培ってきたものを信じて精進し続けようと思っています」
 
「完成された話芸で観客を魅了し、色気のあった祖父(三代目猫八)と、登場しただけで場を明るくする華のあった父(四代目猫八)」に子ども時代から憧れていたが「真面目な自分に継げるだろうか」という不安があったという。「祖父も父も、自身の持ち味を土台に独自の芸を構築してきた。二代目小猫を襲名したばかりの頃、若々しい父と落ち着いた僕が共演するとそのギャップに笑いが起きたのですが、違う個性だからこそピン(一人)の芸として成り立つということを、父とお客さまに教えてもらいました」

 旭川市旭山動物園(北海道)の元飼育係で絵本作家のあべ弘士との出会いをきっかけに、全国各地の動物園・水族館を訪れ、動物たちの姿をつぶさに観察している。「音だけでなく、鳴いている時の姿を見たい。高座ではそのイメージを宿しながら動物になりきって鳴いています」。近年は動物園でのパフォーマンスの機会も増加中だ。「僕の芸を見た飼育員さんたちの反応も参考になる。今後は、演芸場のお客さんたちにも動物に興味を持ってもらうなど、動物園への恩返しもできたらいいなと考えています」


えどや・こねこ
演芸家。1977年東京都生まれ。
高校在学中にネフローゼ症候群を患い、約12年間自宅療養生活を送る。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。2009年、父である四代目猫八に入門。
11年二代目江戸家小猫襲名。16年度に花形演芸大賞銀賞、17年度に同金賞、18年度に花形演芸大賞を受賞。19年度には第70回芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)、第36回浅草芸能大賞新人賞を受賞した。

https://imakana.kanaloco.jp/article/entry-462697.html

2022年6月20日公開 | 2022年6月19日神奈川新聞掲載