かつて、これほど違和感を覚えるオリンピックがあっただろうか。目につくのは疑惑の判定ばかり。それもそのはず。いまや「平和の祭典」は、政治とカネの骨がらみになってしまったのだから。

高梨沙羅はこうしてハメられた…疑惑の「スーツの規定違反」の真相
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〈皆様を深く失望させる結果となってしまった事、誠に申し訳ありませんでした。私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です。(中略)それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております〉(原文ママ)
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 2月8日、高梨沙羅(25歳)はジャンプ混合団体で自身が失格したことを受けて、SNSに真っ黒な画面とともに謝罪文を投稿した。どれだけ彼女が思い詰めているのか、痛々しいほどに伝わってくる。

 高梨の失格について、「かわいそう」だけで済ますのは早計かもしれない。北京冬季五輪では、開催から幾日もしないうちに疑惑の判定が続出しているからだ。

 なかには開催国の中国に対する「忖度」が感じられるケースもいくつもある。まずは、高梨に起きた悲劇を振り返ってみよう。

 7日の混合団体で、日本の先陣を切った高梨は103mの大ジャンプを飛んだ。個人戦で惜しくもメダルに届かなかった悔しさを晴らすかのような大飛躍に、満面の笑みを振りまいた。

 日本は3位とは大差の2位につけたと思いきや、飛躍後に行われた検査で「スーツの規定違反」が判明する。太ももまわりが規定より2cm大きかったのだ。

 失格とわかると高梨は泣き崩れて、関係者に支えられながら引き上げた。メダルの有力候補だった日本だが、結果は4位に終わる。

 「高梨さんの気持ちを考えると胸が張り裂けそうになります。せめて、飛ぶ前に検査をして、問題がないと確認してから飛ばせてあげてほしかったです」(登山家の野口健氏)

 高梨は、混合団体の2日前に行われた個人戦でも同じスーツを着ていたが違反はなかった。つまり、混合団体までの2日間で太もものサイズが変化したとも考えられる。

 「会場は標高約1600m以上あり、氷点下15度を下回る極寒です。脱水や寒さによって身体の部位の太さが変化することは当たり前だと思います。あまりにも厳しすぎるのではないでしょうか」(野口氏)

 どれだけ厳格であってもルールはルール。破れば記録が無効になるのは仕方のないことだ。ただ、そう割り切ったとしても、この一件については疑問が残る点が多い。

 今回、失格となったのは高梨だけではない。日本以外にもドイツ、オーストリア、ノルウェーといった上位常連国の女子選手5名が、飛躍後の検査でスーツの規定違反が認められた。

 そして、彼女たちは口を揃えて「これまでの検査方法とは違う」と抗議しているのだ。

 「本来は女性判定員と1対1で測定するルールなのに、男性判定員が入ってきて検査が行われたノルウェー選手や、失格だと認められるまでに7回も検査を受けたドイツ人選手もいました。

 また、高梨を失格にしたポーランド人の判定員が『上位全員がチェックされるわけではない。逃げ切った人もいる』と発言したことも波紋を広げています」(現地で取材をする五輪担当記者)

 今回の北京オリンピックでは、なぜこんな悲劇が多発しているのか。元JOCの職員である春日良一氏によれば、採点には個人に裁量が委ねられていると指摘、その構造的な問題についてを後編記事『北京五輪「インチキ判定」の悲劇…すべてはIOCと習近平の「金儲け」に利用された』で明かす。

 『週刊現代』2022年2月19・26日号より
https://news.yahoo.co.jp/articles/12d89b1b3f88d7e68a0440663e3ba3947ab75b10