2/14(月) 5:15配信
東スポWeb

出場を迷った余は思えない、迫力ある滑りを見せた高木美帆(東スポWeb)

 究極のオールラウンダーだ。北京五輪スピードスケート女子500メートル(13日、国家スピードスケート館)で高木美帆(27=日体大職)が自己ベストの37秒12をマーク。7日の1500メートルに続き、今大会2個目の銀メダルを獲得した。通算5個のメダルは夏冬の五輪を通じて日本女子最多記録。500メートルへの挑戦に懐疑的な声もあった中、なぜ表彰台に食い込むことができたのか。1998年長野五輪500メートル銅メダルの岡崎朋美氏が高木美の強さの秘密≠明かした。

 銀メダルが決まった瞬間、ジャンプをしながら全身で喜びを表現した。今大会の高木美は3000メートル(5日)で6位、金メダル有力候補だった本命種目の1500メートル(7日)は2位。思ったような結果を残すことができず「パシュートのことを考えると、500に出るかどうかも本気で考えた」。連覇を狙う15日の団体追い抜き(チームパシュート)を優先することも頭にチラついた。

 ただ、かねて抱いてきた「純粋に速くなりたい」という思いで突き進んだ「オールラウンダー」への道。覚悟を決めて500メートルを滑り切った。「メダルを取れたことは、いろんな条件が重なって起こったこと。そういうレースができたことをうれしく思っていて、正直驚いている気持ちでいっぱい」と笑顔を見せた。

 不可能を可能に変えてきた。2015年から日本代表に招かれたオランダ出身のヨハン・デビット・ヘッドコーチは高木美に種目を絞らせる方針を示していたが「私はできる限り全部やっていきたいと思っていた。それが自分にとって一番いいんだというのを証明するような努力、結果を残すような努力をしていた」。数々の大舞台で有言実行の滑りを見せ、周囲の不安をはね返してきた。

 一方で、スピードスケート関係者からは「さすがに500のメダルはないと思う」との厳しい予測もあった。実際に高木美も昨年末の代表決定戦後には「メダル争いにはもう一段階レベルアップをしないといけない」と力不足を認めていた。だが、チャレンジしたい」との思いは変わらなかった。

 最後まであきらめなかったからこそ手にした銀メダル。未知の領域に足を踏み入れる高木美の滑りについて岡崎氏は大会前「氷を滑る上で力強さも必要だが、あまり(氷を)削っちゃうと、ハマっちゃう感じで推進力が減る。でも高木選手は柔軟性のある柔らかい筋肉を持っているので、氷を滑らす技術、なめらかさを兼ね備えている」と分析。さらに、この柔軟性が「オールラウンダー」として活躍できる一つの原動力になっているという。

「フワッというような一押しでも、ワーッといくんですよね。しっかり足も伸びていて、全部自分の足をフル回転させていますよね。普通の選手なら乳酸とかがたまってくると動きが小さくなってきますが、高木選手は動けるんですよね。キツくなっても体のポジションがしっかりしているので、よく言えば疲れにくいスケーティングをしています」

 多くの種目に出場する以上、疲労が蓄積するのは当然のこと。それでも、日々の鍛錬で築き上げた筋肉とスケーティングが高木美の挑戦を支えている。これが強さの秘密だという。

 今大会は5種目にエントリー。残るは金メダルの期待がかかるパシュートと1000メートルだ。「この銀メダルは挑戦したことの証し。誇りたいと思う。残り2種目、しっかりと挑みたい」。究極のオールラウンダー≠ェメダルの量産体制に入った。

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