WEBsportiva. 1/7
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2022/01/07/100/

箱根駅伝には10位以内に与えられる「シード権」という明確なラインがある。その境界線を隔てて、「天国」と「地獄」が存在すると言ってもいいだろう。今大会、予選会を通過した大学のなかで明治大と中央大の2校がシード権を獲得するのでは、という声が強かった。

しかし、シード権を手にできたのは中央大(6位)だけで、明治大はまさかの14位。両校の明暗をわけたものは何だったのだろうか。

両校は非常に似たような状況にあった。箱根駅伝には大正時代から参戦し、総合優勝は明治大が7回で中央大が最多の14回。ともに古豪だが、箱根駅伝の栄光からは遠ざかった。近年では明治大が2018年大会、中央大は2017年大会の出場を逃している。そして前回大会は明治大が11位で中央大が12位だった。

今季は予選会を明治大が1位、中央大が2位で通過。全日本大学駅伝では明治大が7位、中央大が8位に食い込んでいる。登録選手上位10人の10000m平均タイムは明治大が3位(28分31秒18)、中央大が6位(28分37秒35)につけていた。

この1年間、明治大のほうが少しずつ"上"だったわけだが、正月決戦で笑ったのは中央大だった。

中央大は1区・吉居大和(2年)が15年ぶりの区間新記録で飛び出すと、2区・手島駿(4年)は目標どおりの「1時間8分台」で走破。順位は11位に落ちたものの、3区・三浦拓朗(4年)が区間7位、4区・中野翔太(2年)が区間5位、5区・阿部陽樹(1年)も区間6位と好走して、往路を6位で折り返した。

復路も堅実につないだ。6区・若林陽大(3年)で5位に浮上すると、7区・居田優太(2年)は脚にアクシデントがありながら、7位に踏みとどまる。8区・中澤雄大(3年)が4人抜きの快走で3位にジャンプアップし、9区・湯浅仁(2年)も区間3位と好走。10区井上大輝(4年)は順位を落としたが、総合6位でフィニッシュした。

【中央大は監督も絶賛のレース】
「1区の吉居は区間トップで走ってくれましたし、2区の手島は4年生らしく粘り抜いてくれました。3区以降も想定どおりの走りでした。復路は6区の若林と8区の中澤をポイントにしていたんです。

7区の居田は16qあたりでけっこう脚を叩いていたので、無理をさせずに、しっかりとつなぐことを優先しました。9区の湯浅は非常に調子がよかったですし、アンカーの井上も攻めの走りをしてくれました。往路・復路とも100点のレースです」(藤原正和監督)

前回は1区で17位と大きく出遅れて、往路(19位)はまったく波に乗ることができなかった。しかし今回は1区の吉居で確実に先手を奪い、2区は耐えて、3区以降に再加速するというプランニングがピタリと決まった。

「攻める区間」と「負けてもいい区間」を明確に分けていた、とも言えるだろう。攻める区間は1、3、4、6、8区。負けてもいい区間は2区と10区だった。

そして過去の経験を生かした区間配置もうまくハマった。前回3区で区間15位に沈んだ吉居は1年前から1区を予定していたという。2区には前回、裏の9区を区間7位と好走した手島が入り、3区は前々回も同じ区間を経験している三浦、6区は3年連続の若林を配置。その結果、全日本大学駅伝から2つ順位を上げて、10年ぶりのシード権を獲得した。

「それぞれが仕事をしてくれましたね。今年のチームは全日本大学駅伝でひとつ大きな自信を得て、この大会でまた結果を出せた。ようやく強化のサイクルと結果がリンクし始めたかなと感じています。来年はぜひ表彰台にチャレンジしたい。そして、第100回大会で優勝を目指せるようなチームにしていきたいと思っています」と藤原監督。"前進"を始めた中央大はワクワク感に満ちている。

【疑問が残った明治大の区間配置】
一方の明治大は、区間配置がチグハグだったような印象を受けた。今回のオーダーと区間順位は以下の通りだ。

1区・手嶋杏丞(4年)区間13位2区・鈴木聖人(4年)区間16位3区・児玉真輝(2年)区間14位4区・小澤大輝(3年)区間7位5区・下條乃將(3年)区間18位6区・杉本龍陽(3年)区間12位7区・富田峻平(3年)区間2位8区・櫛田佳希(3年)区間11位9区・加藤大誠(3年)区間11位10区・橋本大輝(4年)区間4位

児玉真輝(2年)は前回の1区経験者(区間16位)で、手嶋杏丞(4年)は前々回3区を区間7位と好走している。児玉は11月23日の10000m記録挑戦競技会で全体トップを飾っており、1区と3区を逆にしたほうがスムーズだったかもしれない。
(以下リンク先で)