歓声と悲鳴が同時に聞こえてくる。

 14日のボクシングWBAスーパー・IBF世界バンタム級統一王者、井上尚弥(28)の防衛戦(両国国技館)。挑戦者のディパエンのボディーにパンチを集中させると、8回に左フックでダウンを奪ってTKO勝ちとなった。

 2年ぶりに日本で試合をした井上だが、KO劇をリアルタイムで見られたファンは少なかったはず。というのも、この試合はコンテンツを購入する「ペイ・パー・ビュー(PPV)」形式。3960円を支払わなければ、視聴がかなわなかったからだ。

 ボクシングの本場米国ではこのPPVが主流。購入者の数が多ければ多いほど、莫大な収益が上がる。過去、ボクシングでもっともカネと視聴者数を稼いだPPVは2015年のメイウェザーVSパッキャオ。「世紀の一戦」と称された試合の視聴料は高値の100ドル。約460万件の購入があり、チケット代なども含めると総額5億ドルもの興行収入があったという。ファイトマネーも2人合わせて3億ドル。日本円で約300億円と破格も破格だった。

 井上は米国でも絶大な人気を誇る。昨年、米ボクシング誌の権威といわれる「リング」誌では、パウンド・フォー・パウンドの2位に選出。現役ボクサーの体重が全員同じと想定した上で、2番目に強いと称えられた。

 PPVには「無料で見る機会がなくなるので、競技人気の拡大を阻害している」という批判もあるが、今回の井上のファイトマネーは自身最高額の1億数千万円。今後さらに高騰することが確実視される中、コロナで青息吐息の民放テレビ局に、多額の放映権料などはとても払えない。

 嘆き節のファンも決して少なくない……。

日刊ゲンダイ 12/15(水) 10:50
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d0cba59eccfc55f497e8e073dcbe0e452f168bb

写真
https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20211215-00000023-nkgendai-000-1-view.jpg?exp=10800