Victory11/16(火) 17:05
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■チームの将来性はある、ただ…
 今回の箱根駅伝予選会は過去ワーストの18位に終わったが、チームの将来性を考えると、今後の期待は大きい。今年は2年生が中心で、予選会のチーム上位10人に4年生はいなかったからだ。高槻芳照(2年)が個人14位、 並木寧音(2年)が同28位に食い込んでいる。2人は11月13日の日体大長距離競技会10000mでも快走。並木が28分20秒49、高槻が28分22秒69をマークしている。

 とはいえ、予選会突破をめぐる戦いは甘いものではない。予選会の8〜12位(駿河台大、専大、国士大、拓大、大東大)はケニア人留学生を有するチーム。同13〜15位の筑波大、上武大、城西大は直近3年間で本戦出場経験がある。16位の立教大は学生駅伝で活躍した上野裕一郎駅伝監督が就任して3年目。今回の出走メンバーに3・4年生は1人だけだった。17位の流経大にも強力なケニア人留学生がいる。

 東農大が第99回大会の箱根駅伝に出場するには、上記のようなライバルを最低でも8校は“ゴボウ抜き”しなければいけない。

 東農大は東京都世田谷区にキャンパスがあり、箱根駅伝を目指すチームのなかでは比較的都心部にある。オールウエザーの400mトラックを完備しているだけでなく、近くにはクロカン練習ができる砧公園もある。しかし、箱根路から遠ざかり、陸上部の寮は老朽化。待遇面を含めて、他の強豪校と比べて見劣りする部分は小さくない。

■大学の体育会が低迷する一方、人気が上昇する付属校
 一方で、大学の志願者数は箱根駅伝の不出場に関係なく、高い人気を誇っている。2021年志願者数ランキングは私立大学で33位、志願者数は22187人だった(※大学通信調べ)。

 最近は附属高校も注目を浴びている。週刊誌の報道では、皇位継承第2位の立場にある秋篠宮悠仁さまの進学先候補のひとつとして、東京農業大学第一高校、通称「農大一」が浮上しているという。

 農大一は外部受験をする生徒も多く、附属の東農大だけでなく、国立大や難関私立大などにも多くの進学者を出している。年々偏差値は上がっており、現在の偏差値は65(※みんなの高校情報)。都内私立校のなかでも上位校となっている。

 ほかの附属高校としては群馬県高崎市の農大二と埼玉県東松山市の農大三がある。

 農大二は野球、ラグビー、陸上競技のスポーツ強豪校として有名だ。全国高校駅伝(男子)には昨年まで29回の出場を果たしているが、全国トップクラスの選手が東農大に進学するケースはほとんどない。昨年は石田洸介が男子5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を樹立するも、東洋大に進学した。

 農大三も近年は男子長距離が強い。東農大に進学する選手は少なくないが、エース級は他の大学に進学することが多い印象だ。

 近年の箱根駅伝を見ていると、陸上部だけの頑張りでは太刀打ちできない領域に来ている。筆者が学生時代、同じようなレベルにいた東洋大は大躍進したが、東農大は大きく置いていかれた。大学側が陸上部にどれだけ“投資”したのか。それが大きな分かれ目になったように思う。

 東洋大の陸上部はこの20年で寮が2度も新しくなっているが、東農大は筆者が在籍時から変わっていない(当時も古かった!)。近年、大躍進を続けている東京国際大などの施設と比べても、大きな開きがある。東農大陸上部は学内の「強化指定」に入っているが、中途半端な支援しかできていないように感じているのだ。

 伝統のある野球部とサッカー部、相撲部も陸上部と同様にかつてのような活躍ができていない。東都大学野球連盟の創設から加盟している野球部は2部リーグが主戦場ながら、1部に昇格することもあった。しかし、1993年秋季リーグを最後に1部から遠ざかり、2003年春季リーグで初めて3部降格。2019年秋季リーグでも16年ぶりに3部降格となった(現在は2部リーグに所属中)。

 大正12年に創部されたサッカー部は現在60歳前後のOBに元日本代表やJリーグの監督経験者が多い。だが現在の所属は東京都大学サッカーリーグ1部。関東大学サッカーリーグ2部昇格を目標に戦っている。

 スポーツで大学の存在をPRする必要がなくなったことが弱体化の原因かもしれない。

■やっぱり見たい!箱根駅伝での「大根踊り」
 一方、「大根踊り」で有名な全学応援団だけは健在のようだ。コロナ禍前は各地のイベントに引っ張りだこで、土日は1年先まで予約でびっしりというくらいだった。応援団としても、箱根路は一年で最大の見せ場だっただけに、現在の状況はさみしさを感じているだろう。

(一部略)