日刊スポーツ2021年11月7日6時48分
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<フィギュアスケート:グランプリ(GP)シリーズ第3戦イタリア大会>◇6日(日本時間7日)◇トリノ◇男子フリー

ショートプログラム(SP)7位と出遅れた鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が、ショートプログラム(SP)7位から大逆転優勝を果たした。自己ベストを更新するフリー197・49点をマークして合計278・02点。SPの上位6人ごぼう抜きで海外GP初参戦Vを遂げた。

今年3月に初出場で銀メダルを獲得した世界選手権(ストックホルム)のフリー190・81点を更新。ガッツポーズを繰り返してキス・アンド・クライでも笑顔を見せたが「今回は立場とか成績とか降ろして、一から挑戦者の気持ちだったので、点数に関しては特には気にしていなかったです」と氷上では無心の状態に入れていた。

前日のSPは80・53点。こちらはSPの自己ベスト100・96点より20点以上も低く、シニア転向後の国際大会では最低スコア。「昨日の演技が終わってからの心の切り替えが難しくて…。国際試合でこんなにショートがボロボロだったことはなくて、どうやって立ち直ればいいんだろう」と思い悩んだ。切り替えると話していた朝になっても「不安がこびりついていた」状態だったが、公式練習で吹っ切れた。

「昨日の夜ほど落ち込んではいなかったけど、朝は心の奥に不安がこびり付いていた感じ。公式練習までいろいろ考えていたんですけど、終わった後に父(正和コーチ)から『立場とか成績とか関係なく、練習してきたことを頑張るだけだぞ』と言われて気が楽になりました」

すぐさま結果に表れた。冒頭の4回転サルコーから最後のトリプルアクセル(3回転半)までノーミスでそろえ、これ以上ないリベンジ。成功を目指す4回転ループへの挑戦はSPの低迷を受けて回避したが、昨季と同じ4回転2種3本でも、演技後半に4回転トーループを組み込んだ構成は昨季より踏み込んだ。「ループは外して、できることを1つ1つ。後半の4回転トーループは少し緊張したんですけど(昨季と)ほぼ同じ構成で(自己ベストより)7点くらい上がったことはうれしい」と見事に立ち直った。

この大会を前に、フリー曲「グラディエーター」も改良。「音程をいじって、力強さが増すようなプログラムに変わりました」という調整も奏功した。迎える次戦はGPシリーズ第5戦のフランス杯(19〜21日、グルノーブル)だ。SPの悪夢が晴れてGPファイナル(12月、大阪)にも前進したが、浮かれたりはしない。「1週しか空かないんですけど、できることはたくさんある。今回はショートの不安定さなどが目立ったので、フランス杯では今回のようにならないよう、できることを1つ1つ練習していって安定性を高めたい」とチャレンジャーの心を取り戻した。【木下淳】