10/30(土) 9:06配信
日刊ゲンダイDIGITAL

大越健介(左)と有働由美子(C)日刊ゲンダイ

 衆院選の投開票日(10月31日)が目前に迫る中、テレビ各局も当日は「選挙特番」の特別編成で挑むが、その布陣も明らかになっている。

 選挙特番は各区の「当確情報」をもとに、陣営からの中継や党関係者へのインタビュー、有識者による解説などで構成される。放送はおおむね投票終了の夜8時から一斉にスタート。

 NHK(衆院選開票速報2021)は、瀧川剛史アナ(40)、上原光紀アナ(30)以下、同局の記者、アナウンサーがフル稼働。放送ジャーナリストの小田桐誠氏はこう話す。

「やはりNHKは、民放に比べて選挙報道に圧倒的なお金をかけている。出口調査や取材する記者の数などに大きな差があります。陣営によっては民放で『当確』が出ても、NHKで『当確』が出るまではバンザイしないところもある」

 “横綱相撲”のNHKに対して、民放各局はというと、日本テレビ系は有働由美子(zero選挙)、テレビ朝日系は大越健介(選挙ステーション2021)、TBS系は爆笑問題・太田光(選挙の日2021 太田光と問う! 私たちのミライ)、フジテレビ系は宮根誠司と加藤綾子(Live選挙サンデー)、そしてテレビ東京系は池上彰(池上彰の総選挙ライブ)。なんとメインに座っているのは、5局中3局が“NHK出身者”なのである。

■「安全運転の安心感」

「『ニュースステーション』の久米(宏)さんにしろ、『NEWS23』の筑紫(哲也)さんにしろ、昔は民放も局ごとのカラーがハッキリしていました。安倍政権の頃から、自民党が選挙報道に“公正中立”を要請するなどプレッシャーをかけることが顕著になる中、メインにNHK出身者を据えることは、局にとっては、安全運転で番組を進められるという安心感があるのだと思います。しかし民放にとっては、人材不足は否めません」(小田桐誠氏)

 こうした“安全パイ”起用が増えてきた背景についてメディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「確かに半数以上がNHK出身者というのは、初めてのケースだと思います。はたして民放は、自前のキャスターを『育ててこなかった』のか、『育てられなかった』のか。しかしその実、『育てる気はなかった』のではないかと思います。そもそも『報道』も、視聴率を取るという放送ビジネスの一環であることは否定できず、顔と名前が売れていて、お客さんが付いている人を引っ張ってくる方が手っ取り早いからです。しかしそこには、『局としての報道ジャーナリズムの責任をどう担保するか』という課題は歴然と残ります」

 碓井氏は続ける。

「各局は、NHK出身の有働さん、大越さん、池上さんの3人に対して、“舌禍事件”にならない範囲で、世間の耳目を集める突っ込んだ発言をして欲しいという思惑があるでしょう。一方、『選挙特番』は3人にとっても格好のアピールの機会で、自らの今後を占う“選挙”の場でもあるんです。また、TBSは太田さんがメインで初登板となりましたが“他と違うことをやってくれるのではないか”という期待感がある。党首へのインタビューなどで、どんな突っ込みや揺さぶりを繰り出すのかに注目です」

 前出の小田桐氏も、「ズバリ直球で切り込む池上さんと、太田さんがどんな変化球を投げるのかに注目したい」と話す。

 民放のNHK頼みはみっともないし、情けない限りだが、その中でどう結果を出すのか。キャスター陣も腕の見せどころだが。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/19b18fb91c4a47d42d2dccbd7172825836248eaf