歴代総理の中でも、イケメンの“部類”に入る第100代、岸田文雄新首相。総理大臣が変わったことは、思わぬところで人を困らせている。モノマネで勝負するタレントたちを悩ませているのだ。

 新総裁に決まった9月29日。社会風刺でおなじみのコント集団「ザ・ニュースペーパー」の面々も、結果を固唾をのんで待った。先々の公演内容にもろに影響を受けるからだ。この約1年、山本天心が演じて好評を得てきたスガ首相(意図的なカタカナ表記、以下も同様)からバトンを受けたのが、キシダ議員を担当してきた浜田太一。風刺コントだけでなく、外見のリアリティにもこだわるのがニュースペーパー流だ。

 これまで例えば、松下アキラは小泉ジュンイチロウを独特の口調と付け鼻、ライオンヘアのカツラで見せた。また福本ヒデは麻生タロウ、安倍シンゾウでおなじみ。違う人物を、巧みに演じ分けている。モノマネはその人の特徴がデフォルメされるから笑いを誘う。特徴には長所もあれば短所もある。それが権力を有する政治家であれば、なおさらおかしみは増す。

 ところが浜田が目下、挑んでいる岸田氏は、特徴がほとんどないのが特徴ときている。クオリティを高めようにも困難な状況で歩んできた。しかし、諦めることは許されない。こちらの新内閣お披露目は15日(町田市民ホール)。スガ元首相と河野タロウを掛け持ちする山本は「浜田も仕上げてくるでしょう。うちの岸田シフトに期待を」と話しており、楽しみに待ちたい。

 岸田氏のモノマネは難しいという証が、もうひとつある。この世界で別格の実力を誇る清水ミチコですら、お手上げであることを先日のラジオで明かしている。その理由が「上品だが、自我、自己主張がない」というものだった。おそらく「この人と言えばこれだ」という象徴するものが見当たらないということもあるだろう。岸田氏といえば、出馬会見で誇らしげに掲げた「キッシーノート」(記者から見るとノートでなく、あれはメモ帳に見えるが)のネタ程度では全然ダメなのだ。

 最近の清水で大当たりだったのは、小池都知事だ。現時点で4バージョン。話す内容もウィットに満ちている。じわじわくるおかしみ。正直に明かせば、自分もこの動画を繰り返し見ている。疲れたときなど何度リフレッシュさせてもらったか分からない。

 清水はこれにとどまらず、総裁選にちなんで、高市早苗政調会長にも挑戦した。生まれたての未完成のモノマネであることも断った上で。完成までの成長過程も楽しんで、という動画だ。しかし未完成どころか、ちょっと舌足らずで鼻に抜ける口調が絶妙で精度は高かった。即席でつくったとは思えなかった。

 一口にモノマネというけれど奥は深い。人間観察のエネルギーも半端ではないはず。しかし、対象人物に強力な魅力があれば、磁石で吸い寄せられるようにモノマネが生まれる可能性も高いのではないか。外見の単純なコピーではない。何かしら心揺さぶられ、心に響くからモノマネにしたいという衝動も生まれる。時々、本人以上にその人の本質を突いてると思わせるのは、そんな背景があるからだ。

 しかしそれにしても、そんなモノマネ界の達人たちをもってしても、難しいと思わせるのが岸田首相。そういう点においては「最強の政治家」といえるでしょう。(記者コラム)

スポーツ報知 2021年10月6日 12時8分
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