デイリー新潮取材班編集
スポーツ 野球 2021年8月20日掲載
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 夏の甲子園(全国高校野球選手権)が雨にたたられ、8月19日も過去最多7度目の順延となった。この段階で「決勝戦は29日」と変更された。

「夏休み中に決勝ができるのか」「31日から始まる阪神戦に影響はないのか」「女子野球は予定どおりできるのか」といった心配が囁かれている。通常は中三日の余裕を持ってプロ野球に明け渡す慣習が長年守られてきたという。球場内の看板や表示など、プロ仕様に変更するための準備期間でもある。

 46年前、計5日順延された1975年には、8月22日から予定されていた阪神対ヤクルト2連戦が中止され、高校野球に舞台を譲った記録がある。今回もその再来があるのか。ただでさえ、7月15日から8月12日まで25日間もオリンピックで中断した影響を心配している阪神ファンは気が気ではないだろう。ここまで快調に首位を走るだけに、早く本拠地に戻って、前半戦の好調ムードに乗りたいに違いない。

 女子高校野球の選手にとっては、「初めて決勝戦を甲子園で戦える」という記念の夏。本来なら「休養日の22日」に開催予定だったが、日程変更のため、22日の第4試合として、午後5時からの実施となった。

 長雨が峠を越え、今後試合ができれば大会スケジュールは消化できるが、多くの課題が改めて浮き彫りになった。

 雨は不測の事態、この荒天の下で苦心されている関係者には敬服するばかりだが、主催者たちはもっと真剣に「真夏の開催」を再考する責務があるのではないだろうか。2、3年前から、なぜかメディアのタブーが薄らぎ、「猛暑の甲子園で高校野球を強行するのは危ない!」「時期を移すべきだ」といった議論がテレビでもできる空気になった。しかし、当の朝日新聞が本気でそれを検討している様子はいまのところない。

 私は、「隠される事実」「問題を共有しない体質」こそが高校野球の重大な課題で、それは高校野球が教育の一環ではなく、「新聞社の事業だから」という本質的な欠陥にあると感じている。これまでも、主催者に都合の悪い事実は報道されず、汗と涙と感動の物語によって覆い隠し続けてきた。ここでは多くを語らないが、部員の多い高校では一度も公式戦に出場できず卒業する部員がレギュラーの数より多い。そのことをまったく問題視せず、改善もしない。初戦で敗れる高校は秋春夏、年に3試合で終わってしまうが、そこへの配慮もない。

 この原稿では、長雨で浮かび上がる問題点を指摘しよう。深刻だが、ほとんどそこに光を当てた報道がなく、スルーされている。

 抽選の結果、2回戦終盤の登場となった浦和学院(埼玉)、石見智翠館(島根)、弘前学院聖愛(青森)ら7校は、20日まで一度も試合がない。今年はコロナ禍に配慮し、甲子園練習は中止、組合せ抽選もリモートで行われたため、例年より兵庫・大阪の宿舎に入る時期は遅かった。それでも6日前後には入っているから、試合をしないまま丸2週間をホテルで過ごすことになる。感染対策的にも芳しい状況とはいえないだろう。