第103回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)の大会本部は17日、選手の新型コロナウイルス陽性が確認されていた宮崎商(宮崎)と東北学院(宮城)から、試合参加辞退の申し出を受理したと発表した。コロナ禍も覚悟のうえ開催を決行しながら、出場可否の指針を明確に打ち出すことなく、重い決断を参加校側に“丸投げ”する姿勢は無責任ではないのか。

 宮崎商では前日16日に5人のコロナ陽性が判明したが、一夜明け計13人に感染拡大。さらに8人が濃厚接触と判定され、19日の智弁和歌山(和歌山)との1回戦を辞退することを決めた。不戦敗は大会史上初めて。

 コロナ禍の今大会は個別感染なら出場が認められるが、緊急対策本部は集団感染とみなし、前夜に宮崎商側に伝えて判断を委ねていた。大会本部は「学校の判断を尊重するというところで、物事を進めていきたいと考えています。これがどのように辞退に影響したかについては、学校の方にお問い合わせいただければと考えております」と、徹底して丸投げの構え。

 げたを預けられた宮崎商は「集団感染とみなされ、総合的に判断して苦渋の決断に至りました。今は陰性の部員でも100%ではない。明日は陽性になる可能性がある」と説明。部員は56人で、ベンチ入りメンバーを陽性者と入れ替えれば試合はできたが、対戦相手もあることで一切のリスクを排することに決めた。

 この宮崎商の会見から約3時間後。今度は東北学院が、21日の松商学園(長野)との2回戦を辞退すると表明した。11日の1回戦で愛工大名電(愛知)を破ったが、14日に選手1人が発熱し陽性が発覚。さらに3人が濃厚接触者と判定されたものの、個別感染として次戦にもゴーサインが出ていたはずだった。

 方針の急転について、阿部恒幸校長は「2回戦に出場することになれば、感染者・濃厚接触者の特定につながる恐れがあり、生徒の将来に影響を及ぼす可能性があることから、大変残念ではありますが、学校として出場辞退という判断をいたしました」とコメントを発表。だが、こうした形で3年生の最後の夏が終わるなら結局、陽性の選手は生涯、自分を責めることになりはしないか。

 大会本部は「主催者としてお伝えしたのは、学校のお考えは尊重しますが、慎重にご検討いただければと伝えました」とやっぱり丸投げ。こんな責任回避の姿勢で出場の基準を曖昧なままにしていては、他校にも過剰な自粛やさらなる辞退のドミノを招きかねない。それでいて高野連は「大会を最後まで続けられるよう、感染対策を強化して新たな集団感染が起きないようにしたい」(八田会長)と、あくまで決勝戦までやり遂げる構えでいる。

8/18(水) 16:56 夕刊フジ
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