中日スポーツ7/9(金) 5:05
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 歌手で俳優、そして客員教授としても活躍する菊池桃子(53)がパーソナリティーを務める文化放送「菊池桃子のライオンミュージックサタデー」(土曜午前10時)が今月、番組10周年を迎えた。同時に1984年のデビュー以来の全楽曲180曲のサブスクリプション(定額制音楽配信サービス)も16日、解禁される。コロナ禍をきっかけにユーチューブ配信も手掛けるなど、ますます意欲的な菊池が本紙の取材に応じ、そのポジティブぶりをリスナーを離さない声で語った。

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 土曜の朝に届く番組。菊池は「パーソナリティーは落ち着いたフラットな自分を確認できる大切な時間。ラジオは10代から始めたが、自分ではない役柄を演じる女優業とは違って『私』がそのまま出せるからです」と番組でのナチュラルなスタンスを説明した。

 「文化放送の通行証をもらい、パーソナリティーであり、スタッフでもあるという気分で10年間毎回放送しています」とも。常に気を使っているのは無論「声」だ。「(放送後1週間聴ける配信の)ラジコもあるけど、土曜の朝という気分にマッチする声を届けたいんです」と明かす。

 親しみを覚える優しく、さわやかな声。だが、「若いときには声にコンプレックスもありました。『もっとハスキーで、色気のある声がいいな』と思ったことも。でも『私の声が好き』というリスナーからのメッセージが寄せられ、自分の声が好きになりました」と振り返った。10年続く理由はいつもと同じ声が聴ける安心感にほかならない。「だから、リスナーから見えないスタジオでしゃべっていても電波でつながっている感じがいつもするんです」

 16日にサブスク解禁されるシングル、アルバムやボーカルを担当した伝説のロックバンドといわれる「RA MU」を含む全180曲について菊池は「自分の中ではいつか、と思っていた。2020年以降、今までとは違う時間の過ごし方で、心が不安になったり、疲れたり、メンタルが後ろ向きになるニュースが続く中、『音楽の力』で歩み寄れることができないか考えていた」と期待を寄せる。

 「80年代のポップスが注目される中、残すところは桃子のみ」とも言われた待望の解禁。番組でもリスナーから好きな曲のリクエストが舞い込むのは必至。「これをきっかけにアルバムに入っているシングル以外のいろんな曲を知ってもらえたら。入り口として(ファーストアルバムの)『OCEAN SIDE』から聴いてほしい」と願う。自身のお勧め、お気に入り曲は「あえて内緒にしたい。ファンやリスナーからどんな曲が好きか、どんな反応があるか、毎週の番組でも楽しみで仕方がないんです」と“桃子スマイル”を見せた。

 サブスク解禁を契機に「『ぜひライブを』という声が上がったら?」と聞くと、「(コロナ禍の)このご時世では、皆さんに集まってもらうより、身近なところに私の音楽を置いてほしい」と答えるにとどまった。

 そのコロナ禍に対応し、ユーチューブラジオ「今日もお疲れ様です。」も開設した。

 「デビューしたころのファンが毎年一緒に年を重ねている。そんな同世代に向けて配信したかった」と動機を話し、「社会学でいう、以前調査した人たちの何年後かを追跡調査するようなもの。私がデビューした当時のファンと一緒に生きている気がするんですね」。ユーチューブではキーボードを演奏したり、歌を口ずさむことも。「技術的なことで行き詰まると文化放送のスタッフにお世話になっています」と笑う。

 かつてアイドル時代にファンが自分の子どもに「桃子」と命名する社会現象も。「そういうことを聞くと、背筋が伸びるんです。期待を裏切るようなことはできないな、と。だから突拍子もないことはしないで、しっかり準備したことをしていきたい。丁寧に人生を送っていきたいんです」と打ち明けた。幅広い活動を展開する菊池のぶれないポリシーだった。