https://dot.asahi.com/dot/2021062900077.html

有田哲平と有吉弘行。

この2人は、お笑い界におけるポジションやスタンスが似ている。ともに1990年代「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)や「進め!電波少年」(日本テレビ系)といったバラエティー番組のブームでブレーク。やがて、自分の番組を持つまでになった。最近では、お笑い界全体を考えているような動きが目立ち、実際に影響力もある。

たとえば、有吉は昨年4月にレギュラー化された「有吉の壁」(日本テレビ系)で存在感を示した。コロナ禍にあって、ロケなどが難しくなるなか、可能な限りの収録と再編集で笑いを提供。バラエティーの孤塁を守った印象だ。

また、6月18日には「マツコ&有吉 かりそめ天国」(テレビ朝日系)で、アンジャッシュの渡部建に触れた。グルメ絡みの話題で「そう言ってると渡部さんなんかが『そりゃダメなんだよ』とか言って」と名前を出し、「渡部さんって刑務所入ってるの? ずいぶん見ないけど、どうかしたの? 模範囚だと思うけど」と、いじってみせたのだ。これは謹慎中の渡部が世間から忘れられないようにという、彼なりのフォローだろう。芸人はネタにもされなくなったら、おしまいだ。

一方、有田は一昨年、アンタッチャブルをコンビとして復活させた。柴田英嗣のスキャンダルにより、山崎弘也との別々での活動が続いていたが「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)で10年ぶりに漫才をさせたのだ。のちに有田は「しゃべくり007」(日本テレビ系)において、この件を振り返り「10年ぐらい、たびたび山崎が唇を真っ青にしてコンビ復活について相談しに来ることがあった」としたうえで、
「変な復活の仕方だったらもったいない。うちの番組だったら伏線がある」などと、実現への経緯を語った。伏線とは、それまで柴田が出演するたび、他の芸人と漫才をさせていたことだ。今回もそのパターンと思わせておき、本物の相方である山崎が登場したら盛り上がるのは必至。このサプライズは大成功した。また、この番組では、一発屋芸人のコウメ太夫を何度も呼び、素顔で出演させるなどして、再評価につなげている。

ほかにも「有田P おもてなす」(NHK総合)や「賞金奪い合いネタバトル ソウドリ〜SOUDORI〜」(TBS系)のような芸人の新境地ややる気を引き出す番組を立ち上げ、お笑い界を活性化させようとしてきた。

そんな姿を見るにつけ、これからしばらくのバラエティーはこの2人にかかっているのでは、という気がしてくる。ビートたけしやタモリ、明石家さんまのビッグ3やダウンタウン、ウッチャンナンチャンの第三世代の次を担う存在に思えるのだ。

年齢は有田が3つ上だが、世に知られるのは有吉が早かった。ただ、その芸風はわりと似ている。いわば「愛ある無茶ぶり」が得意で、芸人たちの特性を踏まえつつ、面白く転がすのである。

違うのは、自分自身の出し方、見せ方だろう。有吉は素で、有田は型を作りながらやっている。なぜそうなるかというと、有吉の場合、天国から地獄へと落ち、そこからはい上がってさらなる高みに上り詰めたという稀有な芸人だからだ。たけしなどと同様、劇的な芸能人生に畏敬の念を持たれているので、素のまま何をやっても許されるところがある。本人も自分をさらけ出すことに怖さがないのだろう。

だからこそ、再ブレークのきっかけとなったあだ名芸も成立した。そこにはもともと、シニカルで冷静なキャラだというのもプラスに作用している。猿岩石としての人気絶頂期、共演した東野幸治から「お前、目、死んでんなあ」と指摘された話も、いずれ落ちぶれることを見越して貯金していた話も、今となってはうなずけるところだ。

続きはソースをご覧下さい