日経Xトレンド6/3(木) 6:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d81661546e336c45b7f8c928ab38d1020a5d578
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00460/00023/

2020年末、1979年に発売された日本の名曲が、世界の音楽シーンを席巻した。松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」が、Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日間にわたりトップを記録したのだ。実は2010年代末から、昭和のシティポップは「新しい音楽」として、リリース時を知らない海外の音楽ファンや日本の若者に聴かれる“第2の最盛期”を迎えている。

2020年末に突如として世界の音楽シーンを席巻したのが、松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」。1979年(昭和54年)に発売された日本の曲が、Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日連続1位になったのだ。バイラルチャートとは、SpotifyからSNSなどにシェアされ再生された回数などを基に集計された、「今話題の曲」を反映したもの。つまり2週間以上にわたって、「世界で最も旬な曲」であり続けたといえる。

実は2010年代末から、昭和を彩ったシティポップは現代の「新しい音楽」として、リリース時を知らない海外の音楽ファンや日本の若者に聴かれる“第2の最盛期”とも呼ぶべき時代を迎えている。「真夜中のドア/Stay With Me」の突然のヒットは、その象徴的な出来事でもある。

そもそもシティポップとは何か。明確な定義は無いが、音楽ジャーナリストの柴那典氏は、「概念的だが、世界で聴かれているのは1970、80年代の日本で、都会的でおしゃれなイメージの曲として聴かれていたポップソング」と解説する。代表的なアーティストに挙げられるのは山下達郎や竹内まりや、大瀧詠一、大貫妙子など。ここでは、この定義に沿う曲をシティポップと呼ぶ。

まず海外のコアな音楽ファンの間で、シティポップの認知が広がっていったのは2010年代前半。1980年代頃の日本を含む各国の曲や音源の一部を取り入れ(サンプリングして)、新たな曲を作り上げる「Vaporwave」というジャンルが話題に。派生する形で日本の曲を題材にした「Future Funk」という新たなジャンルも生まれた。

国内外の音楽トレンド動向に詳しいSpotify Japan コンテンツ統括責任者の芦澤紀子氏は、「VaporwaveやFuture Funkが世界的なトレンドになり、そこでサンプリングする曲の“ネタ探し”を通してシティポップの曲が世界で発掘されていき、ここ数年のストリーミングサービスの普及でメインストリームに広がっていった」と言う。

「Plastic Love」のヒットに呼応するように、竹内まりや自身も過去のライブのベストシーンを収めた映像作品「souvenir the movie 〜MARIYA TAKEUCHI Theater Live〜」を18年11月に劇場公開。19年には年末のNHK「紅白歌合戦」に出場するなど、精力的に活動を続けている。

ブームの発端たる「Plastic Love」のヒットが韓国人DJによるリミックスだったとすれば、それを決定付ける「真夜中のドア/Stay With Me」のヒットはインドネシア人シンガーのカバーによるものだったといえる。1980年代のシティポップや最新アニメソングの日本語カバーを2016年からYouTubeで公開してきたRainychが20年10月末、21年4月中旬時点で登録者数150万人を超えるチャンネル上で「真夜中のドア/Stay With Me」のカバー動画を公開。原曲が世界的にヒットしたのは、その数カ月後の出来事だった。

●日本でもシティポップがロングセラーに
では、なぜ海外でこれほどまでにシティポップが受け入れられているのだろうか。芦澤氏は、「シティポップはAORと呼ばれるジャンルなど、当時日本を含め世界的にヒットしていた洋楽がベースにある。そこに日本独特の要素が加わり、海外の人にとっては親しみやすく、どこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる点が魅力ではないか」と分析する。

海外ではバラードより、聴いていると自然に体が動くようなグルーヴ感のある曲が支持されるという。「例えば海外の人気曲だと、竹内まりやさんなら『純愛ラプソディ』や『シングル・アゲイン』より『Plastic Love』、杏里さんなら『オリビアを聴きながら』より『Remember Summer Days』というように、日本での人気や知名度と必ずしも一致しない」(芦澤氏)。Spotifyでは「70's City Pop」など、年代別にシティポップの曲をまとめたプレイリストを公開している。

(一部略)