“令和の怪物”と称されたロッテの佐々木朗希選手がついに1軍デビューを飾った。同じ規格外の投手として、大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手と勝るとも劣らない能力を秘めているという。AERA 2021年5月31日号から。

 同世代でも成長速度、完成度は選手によって違う。例えば、佐々木朗と同学年のオリックス・宮城大弥(19)は昨年にプロ初勝利を飾り、今年は開幕ローテーションに入って主力投手として活躍している。多彩な変化球とキレのある直球で4勝0敗、防御率2.05。新人王どころか投手タイトルも十分に狙える。

■フォーム改良で好結果

 宮城と佐々木朗は対照的な高卒1年目を過ごした。宮城は昨年、2軍のウエスタン・リーグで13試合に登板し、6勝2敗、防御率2.72の好成績でリーグ最多勝を獲得。一方で、佐々木朗は1、2軍共に公式戦登板はなかった。体力作りに専念するためだったが、春季キャンプからシーズン終了まで1軍帯同という異例の育成方針に「過保護すぎる。ファームも含めて実戦で一球も投げないのは考えられない」と批判の声も上がった。

 2年目の今季。2月の春季キャンプでブルペン入りした佐々木朗のフォームを見た報道陣から驚きの声が上がった。テイクバックが従来より大きくなり、高々と上げていた左足の上げ幅も狭くなった。投手がフォームを変えるのは大きなリスクが伴う。心配する声も出たが、佐々木朗は決断が間違いでなかったことを証明した。3月12日のオープン戦・中日戦(ZOZOマリンスタジアム)で実戦デビューして1回三者凡退の快投。2軍のイースタン・リーグでは5試合に登板し、防御率0.45の好成績で1軍に昇格。西武戦で進化した姿を見せた。

 身長190センチの本格派右腕・佐々木朗と同じ規格外の投手として比較されるのが、日本記録の165キロをマークした身長193センチで、現在は大リーグ・エンゼルスの大谷翔平(26)だ。大谷は岩手・花巻東高から日本ハムに入り、1年目の13年に3勝(0敗)。2年目は11勝(4敗)と大きく飛躍した。当時日本ハム担当を務めた記者はこう分析する。

■170キロの可能性も

「球は速かったですけど、制球は荒れていました。他球団も足で揺さぶろうと盗塁を仕掛けてきました。クイックで対応しようとして最初は制球に苦労していましたが、登板を重ねて修正できるようになったんです。高卒2年目で比較するなら佐々木朗のほうが制球力はいいし、まとまっています。ただ、荒々しさ、球の勢いで言えば、大谷のほうが上かな。どちらも日本人離れした体格の本格派右腕ですが、少しタイプは違うように感じますね」

「二刀流」の大谷は18日、インディアンス戦でリーグトップの14号本塁打を放った。投手としても大リーグの強打者から一目置かれる存在になっている。佐々木朗は「二刀流」ではないが、投手としての潜在能力は劣らない。大リーグのあるスカウトがエールを送る。

「高校時代から注目して見ていますが、間違いなく将来は大リーグで活躍できる逸材だと思っています。彼に足りないのは経験だけです。自分の投球スタイルを変える必要はない。あれだけの速い球を投げられるのは大きな武器だし、170キロも出る可能性が十分にある。ロッテのエースではなく、日本球界のエースを目指してほしい」

 パ・リーグには、大リーグ・ヤンキースで6年連続2桁勝利をマークした楽天・田中将大(32)ら好投手が多い。投げ合うことで多くのことを学べる。対峙(たいじ)する相手打者もプロでやってきたプライドがある。目の色を変えて向かってくるだろう。佐々木朗は苦い経験も味わうことになるが、全てが大きな糧になる。

 令和を代表する投手になれるか。佐々木朗には伸びしろしかない。(ライター・牧忠則)

※数字などは20日現在

※AERA 2021年5月31日号より抜粋

https://news.yahoo.co.jp/articles/6b05c96de0898659a0ce7e3bff6d1fa9bf9ddfa2
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