今季で18シーズンの歴史に幕を下ろすラグビーのトップリーグ(TL)年間表彰式が24日、オンラインで行われ、最優秀選手(MVP)は優勝したパナソニックで、医師となるため現役最後のシーズンとなったWTB福岡堅樹(28)が初受賞した。TLは来年1月から新リーグに生まれ変わる。特別賞としてリーグ戦通算最多1282得点のFB五郎丸歩(35)、リーグ戦通算最多出場の山村亮(39)=ともにヤマハ発動機=らも表彰された。

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 「青い稲妻」のファイナルシーズンにでっかい勲章が加わった。世界のトップ選手が集ったTLラストイヤーのMVP。福岡は謙虚な言葉で喜びを表現した。

 「自分が引退する最後のシーズンに最高の栄誉を頂けて光栄に思います。今季は最後のシーズンと決めて臨みましたが、あと何試合とか考えず、目の前の一試合一試合に集中して、自分自身後悔しないように全力を尽くしました」

 開幕前は医学部受験準備に追われ、週に1度しか練習に出られなかった時期もあった。4月の順大医学部入学後は、午前中は東京都内のキャンパスで授業に出席。授業が終わるや、自ら乗用車を運転して群馬県太田市のグラウンドにとんぼ返りし、午後の練習に滑り込む日も少なくなかった。

 「移動してすぐに運動の負荷を上げるとけがの原因になる。トレーナーやフィジカルコーチと相談して自分の出力を調整したり、試行錯誤のシーズンでした」

 そんな過酷なシーズンを送りながら、リーグ戦では6試合で7トライ、プレーオフは4試合で7トライを量産した。

 「僕は集中力が長く続かないので、先のことを考えずに目の前の試合だけに集中したことが、今季も成長できた要因だと思います」

 「今季一番印象的なトライは?」との問いには困った表情を浮かべ、こう答えた。

 「本当に優劣をつけられない。一試合一試合すべてがラグビー人生の最後のピースになる幸せなシーズンだったし、全部のトライが貴重でした」

 出来過ぎなストーリーに「『漫画か?』との声も出ているが…」と聞かれると「素晴らしい仲間に恵まれた。振り返ると、運を持っていたのかな」と笑った。どこまでも謙虚。そして口にしたのは感謝の言葉だ。

 「日本ラグビーはこれからも続きますし、僕以上に素晴らしい選手が出てくるので、これからも日本ラグビーをよろしくお願いします」。真摯(しんし)に努力を重ねてきたエースはさわやかな言葉を残し、静かに次なるステージへ向かった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/61976d72e43046534db4f974b707e00db5f496ee
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