永世名人が、見たこともない様子で大慌てだ。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Bリーグの第3試合、チーム康光とチーム菅井の対戦が5月15日に放送された。この第1局で、永世名人の有資格者である森内俊之九段(50)が、残り1秒という局面で持ち駒の銀を掴み損ね、あわや切れ負け寸前で大慌てとなった。

森内九段と言えば、タイトル99期で永世七冠も達成している羽生善治九段(50)と長年ライバルとして戦ってきたレジェンド棋士の一人。名人8期を含むタイトル12期の実績を持ち、十八世名人の資格者だ。居飛車党の受け将棋で、その重厚な指し回しが特徴ながら持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指し戦でも瞬発力に秀でた若手棋士にひけを取らない決断と、力強さで勝ち続けている。

 そんな強者が慌てるシーンなどめったに見られないが、菅井竜也八段(29)との熱戦では、思わず取り乱した。序盤、中盤とリードしていた一局で、終盤に逆転を許すと、残り時間もどんどん減る状況に。苦しい中で、7ニの地点に銀を打ち込もうとしたところ、うっかり手を滑らせ駒を落としてしまった。

 このまま指せなければ、放送対局で切れ負けというアクシデントになるところだったが、森内九段は咄嗟に7ニの地点を指差して「銀、銀、銀!」と連呼。ルール上では、駒をその地点に動かさなくても、時間内に指し手を示せば問題ない。チェスクロックが残り1秒まで減っていたが、ぎりぎりでボタンをプッシュ。盤上の駒も乱れたものの、なんとか銀を打つことができ、惨事を免れた。

 森内九段だけでなく、視聴者も全員肝を冷やした瞬間に、放送していたABEMAのコメント欄には「指し手アピール」「宣言を見るとは」「切れ負けだけは避けた」「めっちゃ手震えてたな」と、興奮が止まらないといった声が大量に寄せられていた。

◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a9050a860969fbeb06e40bbe7a3201ab44accabb
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