近年はeスポーツのタイトルにも選ばれ盛り上がりを見せている『パワフルプロ野球』(以下/パワプロ)。リアルなグラフィックでアプリゲームとしても好評を博している『プロ野球スピリッツ』(以下/プロスピ)と併せて、野球ゲーム市場を席巻するこの2タイトルの人気を支えているのが、選手能力値のリアルさ。近年は、プロ野球ペナントレースのデータをリアルタイムでアップデートするなど、現実との“地続き感”をゲームで味わうことができる。これらデータは一体どのようにして“査定”し、ゲームに反映しているのだろうか?コナミデジタルエンタテインメントの開発チームに話を聞いた。



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■少数精鋭で『パワプロ』1作目を制作時、まさかのミスが発生

━━そもそも『パワプロ』誕生はどのような経緯で誕生したのですか?

【豊原浩司(家庭用『パワフルプロ野球』シリーズ リードプランナー)】制作が始まったのは1993年の初め頃でした。当時の家庭用野球ゲームは、わりと平面的だったので、もう少し立体的にすることで、より戦略性をあげようという狙いで開発することになりました。

━━選手の詳細な“能力値”をゼロから作るにあたり、開発チームはどのような体制で情報を収集されたのですか?

【豊原】当時は本当に人数が少なくて、プログラマー3人にデザイナー2人だけというチームでした。プログラム担当のひとりがバッティングとピッチング、もうひとりが走塁と守備の能力というふうに分けて開発しました。当時はまだインターネットがない時代でしたから、地上波の野球中継やスポーツニュース、各地から取り寄せたスポーツ新聞、野球雑誌、選手名鑑、レコードブックなど主に紙媒体に頼っていましたね。あと、実際、球場に行って、一軍、二軍の試合も観戦していました。

━━当時は入手できるデータが少なかったんですね。

【豊原】正直なところ、めちゃめちゃ野球に詳しいマニアと同じレベルのデータですね(笑)。でもそれが逆に一般の野球ファンの目線と重なり、良かったのかもしれません。

━━第1作が発売された際、ユーザーや選手からクレームはありましたか?

【豊原】当時はSNSもなかったですし、そういった声はアンケートはがきくらいでしか耳に入ってこなかったんですけど、特に大きなものはなかったですね。ただ…。

━━ただ?

【豊原】能力査定ではないんですが、千葉ロッテマリーンズの初芝選手の打席を逆にしてしまいまして…。

━━ええっ!右打席を左打席に?

【豊原】はい。ただ、その時も選手からも、ユーザーからもクレームはありませんでした。私の耳に届いていないだけかもしれませんが…。今となっては、『パワプロ』ファンに語り継がれるほどの伝説のミスとなっています(笑)。

■新加入選手の能力値は蓄積されたデータから算出も…何年やっても難しい

━━今は「データ野球」が声高に叫ばれ、選手のさまざまな能力を分析する「セイバーメトリックス」を筆頭に、一般の人もかなり細かいデータを見ることができます。現在はどのような形で“能力値”を作っているのですか?

【松井徹哉(家庭用『パワフルプロ野球』シリーズ プロデューサー)】現在は「Japan Baseball Data」から選手の成績データを取得し、そこから我々のほうで値を変換し、活用しています。加えて、各球団に担当をつけています。ただそれだと、担当ごとに個人差が出たりする可能性もあるので、各球団担当から上がってくる情報を集約し、最後にバランスをとる統括がいます。例えば、同じ3割バッターであっても、どういうピッチャーと対戦しての3割なのか、球場の広さはどのくらいなのか。そういったものを総合して、最終的に同じ成績でも差別化しています。

https://news.livedoor.com/article/detail/20176516/
2021年5月12日 8時40分
オリコン