現代ビジネス 5/1(土) 8:02

低視聴率と称賛コメントのギャップ

 昨年11月30日にスタートした朝ドラ『おちょやん』(NHK)がいよいよ残り2週の放送を残すのみとなった。

 ここまでは17%前後の世帯視聴率が「近年の朝ドラよりも2〜5%も低い」と繰り返し報じられているほか、「話題にもならない」などと、さんざんな言われようであり、「失敗」のムードを醸し出すメディアが目立つ。

 しかし、SNSを見ると、コメントの大半は称賛、感動、愛着などのポジティブなものが占め、見ている人の満足度はむしろ他の朝ドラよりも高い。

 実際、低視聴率を報じる記事が出ると、それを打ち消すような反発のコメントで埋め尽くされ、しかもその声は中盤から終盤にかけて増えている。

 では、なぜ『おちょやん』はメディアから過小評価されてしまったのか? また、そんな状況の中で、なぜ視聴者の支持を獲得できたのか? 

苦労と不幸から逃げない志の高さ
 『おちょやん』は大阪・南河内の貧しい家に生まれた竹井千代(杉咲花)が、奉公に出ていた道頓堀で芝居に魅了され、女優を目指す物語。こう書くと凡庸な物語に見えるが、千代の人生は近年の朝ドラでは特筆すべき、苦労と不幸の繰り返しだった。

 千代は小学校すら通えない貧乏暮らしの中、毒父・テルヲ(トータス松本)と継母・栗子(宮澤エマ)から家を追い出され、9歳で道頓堀の芝居茶屋「岡安」へ奉公に出る。仕事に厳しい女将・岡田シズ(篠原涼子)から努力で認められ自分の居場所を見つけるが、またも毒父のせいで出ていかなければいけなくなってしまった。

 京都に行き場を求めた千代は、カフェー「キネマ」の女給をしながら、女優の夢を見つけて歩きはじめる。その後、女優として精進を重ねながら、弟・ヨシヲ(倉悠貴)と悲しい再会。天海一平(成田凌)と結婚した一方で、父・テルヲが死去。身寄りのない松島寛治(前田旺志郎)との新たな生活がスタート。戦争で大切な人々や働き場を失うなど、千代は波乱万丈の日々を過ごす。

 さらに終戦後の芝居公演再開後には、夫・一平と劇団の女優・朝比奈灯子(小西はる)の不倫によって、千代は女優を辞め、道頓堀を去ることになってしまった。

 千代の人生は何もないところからスタートし、「何かを得ても、何かを失う」という苦労と不幸が続いている。しかし、このところの朝ドラは「朝から重い展開は避けたい」という視聴者の声に配慮して、主人公にそれほどの苦労や不幸を背負わせない傾向が強かった。

 「悪人はほとんどおらず、いい人たちに助けられる」という展開が多かったのだが、『おちょやん』は人生の非情さから逃げずにしっかりと見せ、必死に生きる主人公の姿と、心に染みる人の温かさを描いてきた。

 声の大きい一部の視聴者に迎合せず、主人公の人生をシビアに描いてきたのだが、もともとNHK大阪放送局制作の朝ドラは『カーネーション』『ごちそうさん』『まんぷく』『スカーレット』などでも、そんな傾向が見られた。

 『おちょやん』は今なお「名作」と呼ばれるそれらと比べても、視聴者の反応を気にして無難な形を選ばず「重苦しいシーンから逃げない」という意味では頭1つ抜けているかもしれない。ましてや、コロナ禍の重苦しいムードの中でもブレなかったのだから、志の高さを感じさせられる。

※続きはリンク先で
https://news.yahoo.co.jp/articles/f48ae83867f262a6cb15cb4cc88a87f60e89884a
写真:現代ビジネス
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