2021年03月17日 05時15分
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 いよいよ「引退」の2文字が現実味を帯びてきた。大相撲春場所3日目(16日、東京・両国国技館)、横綱白鵬(36=宮城野)が右ヒザのケガで途中休場。次に出場する場所で自らの進退をかけることになった。ただ、無条件で現役続行の猶予期間が与えられたわけではない。親方衆からは横綱鶴竜(35=陸奥)とともに「即刻引退」を求める声が噴出しており、横綱審議委員会(横審)も「引退勧告」を決議する可能性が浮上。事態は風雲急を告げている――。

 白鵬は春場所3日目(16日)、日本相撲協会に「右膝蓋大腿関節軟骨損傷、関節水腫で手術加療を要する。術後、約2か月のリハビリテーション加療を要する見込み」との診断書を提出して休場した。今月中に手術を受ける予定で、次の夏場所(5月9日初日、国技館)は休場する見通し。師匠の宮城野親方(63=元幕内竹葉山)は「本人が名古屋で最後(進退を)かけますと言った。今まで途中休場が多かったから最後まで取り切りたい気持ちがある」と明かした。

 師匠の言葉通りなら、名古屋場所(7月4日初日、愛知県体育館)では力士生命をかけて臨むことになる。協会トップの八角理事長(57=元横綱北勝海)は「このままでは終われないという気持ちだろう」と心中を推察し、あくまで進退に関しては本人の意思を尊重する構えを見せた。

 ただ、これで7月までは無条件≠ナ現役を続けられるという保証はない。初日から休場中の鶴竜とともに、すでに角界内では両横綱に対する不満がピークに達しているからだ。

 ベテラン親方の一人は「(本場所に)出る、出る≠ニ言って毎回、同じことの繰り返し。協会はタダで飯を食わせているようなものだ」と憤りを隠さない。別の親方も「これ以上、続けることはあり得ない。2人ともすぐに辞めさせないとダメだ」と即刻引退を主張した。

 さらに、横審の動向にも注目が集まる。昨年の両横綱は5場所のうち4場所で休場。横審は11月場所後の定例会合で2人に対して史上初の「注意」を決議した。その効果もなく、今場所を含めて5場所連続の休場。年6場所制となった1958年以降では4番目の長さだ。今場所の横審会合は新型コロナウイルス禍の影響で未定となっていたが、この日までに千秋楽翌日の29日に開催されることが正式に決まった。

 芝田山広報部長(58=元横綱大乃国)は「横審から指摘(注意)を受けながら先場所に続き一人(鶴竜)は頭から、一人(白鵬)は途中休場。何もないことはないでしょう」と予測。「横綱の立場は大関とは違うことをどう認識するか。横綱は別格の力を持っているから称号がある。ぎりぎりの線ではダメ」と厳しい見解を示した。

 実際、一部の委員からは「引退すべき」との意見が出ており、仮に今度の会合で最も重い「引退勧告」が決議されるようなことになれば、すぐにでも進退の判断を迫られる可能性がある。鶴竜の師匠、陸奥親方(61=元大関霧島)は横審から勧告が出た場合には師弟で進退について話し合うことを明言。白鵬と言えども勧告を無視≠キるわけにはいかないだろう。

 かねて白鵬は東京五輪開催までの現役続行を公言。新型コロナウイルス禍で五輪開催が1年延期となり、今年7月の開幕が不透明な状況でも、目標を変えていない。優勝44回を誇る大横綱は、果たして現役のまま再び土俵に立つことができるのか。いよいよ進退問題は重大局面を迎えている。